地元の人に愛される!クロアチアのミケランジェロが残した、“生きた”世界遺産
先日スロベニアとクロアチアの添乗より帰国しました。
黄葉真っ盛りの旅でしたが、今回は添乗員も感動したクロアチア・シベニクの聖ヤコブ大聖堂をご紹介します。
アドリア海沿岸のダルマチア地方は中世にはベネチア帝国の傘下の町々が転々と沿岸部に連なっていた地域です。そのうちの1つだったシベニクには、1431年から100年以上の時をかけて作られた大聖堂あります。その建築の指揮を取ったのは近郊のザダルという町出身の建築家であり、彫刻家でもあったユライ・ダルマティナッツです。地元ではその多才ぶりから「クロアチアのミケランジェロ」と親しまれています。
このダルマティナッツさんは当時の最先端だった都ベネチアで学び、当時花開いたルネサンス芸術を吸収して故郷ダルマチアに戻って、この地域にルネサンスを広めた先駆者でもあります。
そんな彼が手がけた大聖堂は外壁には72人の顔の彫刻があり、建設に使われた石灰石はアメリカのホワイトハウスにも使われた近郊のブラチ島のもので…など添乗員として皆様にご案内する情報は山ほどあるのですが、せっかく足を運んでいただいたならぜひご覧いただきたいのが内部の洗礼室です。
主祭壇の右奥、半地下になった洗礼室には天井と壁、洗礼盤に精緻な彫刻が施され、小さいながらとても密な空間が広がっています。三位一体が表されているといわれる礼拝堂ですが、天井には父なる神と鳩で表された精霊が彫られているのみ。子のキリストがいないのですが、彼はあえてキリストを彫らないことによりこの洗礼室を不完全なものとして作りました。
なぜかというと、そう、この洗礼堂は洗礼の儀式のための赤ちゃんが現れて初めて完成するのです。洗礼盤のところへ運ばれた赤ちゃんは天井の彫刻の父なる神と精霊に見下ろされ、洗礼受けるだけでなく、その子自身が子なるキリストの役を演じ、それによって完成した教会の一部になるのだそう。ルネサンスを学び、「人間こそ大切にすべき」という信念を持っていたダルマティナッツらしい、なんて壮大な仕掛け!
この大聖堂は世界遺産になってもなお、地元の人のための教会として使われています。今回私たちを案内してくれたガイドさんも先日ここで結婚式を挙げたそうで、「子供が生まれたらここで洗礼式をするの!」と目を輝かせて言ってしました。
今年もう1つ世界遺産が増え、ますます注目を浴びるシベニク。人口3万人ほどの町にとってどれほど誇らしいか熱っぽく語ってくれたガイドさんが印象的でした。
クロアチアに行ったら、ぜひ、地元シベニクの人に愛される聖ヤコブ大聖堂も訪れてみてください。(松永華)
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