素朴なロマネスク教会は歴史を静かに語る(ポルトガル)
3月7日発「ポルトガル・ドウロの谷と南ガリシア・ロマネスク10日間」のツアーから戻って参りました。
<サン・フランシスコ修道院回廊の彫刻>
ポルトガルの国土は南北に長く、イベリア半島のレコンキスタの歴史や地理的なものからリスボンを流れるテージョ川を境に、南北でそれぞれの特徴を有しています。今回のツアーは、リスボンより北へ320km離れたポルトから始まり、ポルトから北東の地域と国境を越え、スペインの南ガリシア地方を巡ってきました。目的はロマネスク教会巡りではありましたが、ポルトガルのロマネスク教会の存在は、まさにイベリア半島のレコンキスタとポルトガル王国誕生前後の歴史に深く関わりをもつ点もあることが非常に興味深いことでもありました。
<サンタ・コンバ・デ・バンデ教会>
ポルトガルにおけるロマネスク教会は、リスボン近辺にはなく北部のみでみられるものです。それは711年からのイベリア半島イスラム統治時代の到来、イスラムに征服されなかったイベリア半島北部のキリスト教国により徐々に南下していったレコンキスタの再征服の痕跡ともいえます。
ロマネスク建築は、国ごとに多少の前後はあるものの11世紀後半から12世紀初めに建てられた半円アーチや厚みのある壁、小さな窓などの特徴を有しています。1085年にレオン・カスティーリャ王国アルフォンソ6世によるテージョ川以北までの平定、その際に呼ばれたブルゴーニュの騎士アンリ・ド・ブルゴーニュが、戦争の功績によりミーニョ川とモンディエゴ間にポルトゥカレ伯領を与えられたこと(※クリュニー修道院はブルゴーニュ地方から10世紀に誕生)、北部のギマランイス、コインブラを中心に1143年ポルトガルが建国、という歴史的出来事とキリスト教徒による再征服の証のように教会が建てられました。そしてポルトガルにおけるレコンキスタの完了は1249年。すでに13世紀半ばになる頃に首都がリスボンに移され、教会が建てられますが、そのころは既にゴシック建築の時代。それゆえに、リスボン近辺ではロマネスク教会が見られないのと北部で見られるロマネスク教会とは、北部のキリスト教国による再征服を達成した証であり、その時代を表しているのです。
<バーホのサンタマリア教会>
その他、イスラム侵入以前にイベリア半島にいたスエヴィ族、西ゴート族による影響や紀元前1000年頃にいたケルトの影響と思われるものがプレ・ロマネスク教会にわずかに見ることができました。何気なく見ているだけでは素朴で地味な教会の存在がイベリア半島の歴史を物語っている。北部ポルトガルやグリーンスペインと言われるガリシア地方は早春の3月でも緑が美しく、自然豊かな景観のなかに溶け込んで静かに建つロマネスク教会は、まるで古の歴史を物語る長老のようにも思えました。(髙橋)
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