地中海貿易を制したフェニキア人発祥の地ビブロス(レバノン)
<ビブロス遺跡>
先日、「レバノン周遊とルーブル・アブダビ 8日間」のツアーから帰国しました。
12年ぶりにツアーを再開したレバノンと昨年11月に開館したばかりのパリのルーブル美術館初の海外別館であるルーブル・アブダビを訪れるツアーです。
レバノンは地中海に面し、周りをシリアやイスラエルに囲まれた小さな国です。国の面積は岐阜県ほどしかなく、その中でイスラム教シーア派やスンニ派、ドルーズ派、キリスト教マロン派、ギリシャ正教など様々な宗教・宗派が政治的にも協力し共存する珍しい国です。それ故に過去には内戦が勃発し情勢が不安定な時期もありましたが、今は治安的にも落ち着いており平和そのものでした。しかしながら、ベイルート市内には弾痕の残った建物も新しい建物の隣に並んでおり、戦争の爪痕も垣間見えます。レバノンと聞くと、そんな記憶に新しい内戦のニュースが思い起こされるかもしれませんが、実はその歴史は古く、8000年前まで遡ります。
今回訪れたのは首都ベイルートより北へ40㎞程のフェニキア人発祥の地として有名なビブロス。紀元前6000年頃から人が住み始め、その後、フェニキア、ローマ、十字軍の時代から現在に至るまで人が継続して住み続けている唯一の都市です。前3000年ごろのフェニキア時代、レバノン杉が多く群生していたカディーシャ渓谷に近かったため地中海貿易の拠点の港として発展しました。レバノン杉は強靭で虫も付きにくく建築材に適していたため、フェニキア人はレバノン杉で建造した船に乗り、主にエジプトなど海外諸国へレバノン杉を輸出。エジプトではレバノン杉がピラミッドの梁や太陽の船、ファラオの棺桶、樹脂がミイラづくりにも使われました。エジプト新王国のファラオ・トトメス3世が遠征を行ったおりに港を訪れ、レバノン杉がエジプトへ滞りなく出荷されるよう取り計らったという記録も残っているそうです。
<レバノン杉>
また、エジプトからはパピルスを輸入し、ギリシャへ再輸出もしていました。そのため、ギリシャ語でパピルスを意味するブブロスからビブロスと名付けられ、バイブル(聖書)の語源ともなりました。私たちが普段使用しているアルファベットも元はフェニキア文字であり、地中海貿易によってパピルスとともにフェニキア文字が各地へ伝えられ改良されて現在の形となりました。世界最古のアルファベットが刻まれたビブロスの王アヒラムの石棺はこの地で発掘され、今はベイルートの国立博物館に展示されています。他にもエジプトの影響を受けて造られたであろうオベリスクが並ぶ神殿が残り、そこから出土した兵士の青銅像も国立博物館で見られました。
長い歴史を誇る都市がビブロスの他にも点在するレバノンですが、今の時点ではまだ一部は訪れることが叶いません。いずれ全ての地を訪問することが出来るよう、更なる平和が訪れることを祈ります。(日裏)
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