先日、南極への旅から帰国しました。
南極は“地球最後の秘境”とも言われます。解釈は色々なのでしょうが、まずその物理的な位置や、寒冷で乾燥した過酷な環境から見て"秘境"という感じがします。さらに、人類が本格的に探索を開始してから約100年しか経たないこと、大陸を覆う分厚い氷と雪の中には未知なる過去がたくさん詰まっているらしいこと、人類定住の歴史はないとされる一方で独自の生態系が形成されてきたことなども秘境と呼ぶに値するのではないでしょうか。
その南極へ「行ってくるよ」というと、「何を見に行くの?」と言われることがあります・・・。氷と雪しかないと思われがちだからでしょうか。
しかし、この過酷な環境で、人間を知らずに生活する動物がたくさんいます。彼らが素のままで生きる様子をちょっと覗かせてもらうことが南極での楽しみ!クジラ、シャチ、アザラシ、オットセイ、数々の海鳥などなど。なかでもペンギンの愛らしさはダントツです。
今回の旅では、ジェンツーペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギンの3種がメイン。ペンギンは18種いるそうですが、代表格ともいえる3種です。それぞれ特徴があって、すぐ見分けられるようになります。
今回訪問した12月上旬は、ちょうど卵を温めている時期。腹ばいになってじっと卵を温めているペンギン、その横で巣作りに必要な小石をエッサホイサと運ぶパートナー、と思いきや要領のいいペンギンはお隣さんの巣からこそっと小石を拝借して自分の巣に移していたり。そんな中、天敵のオオトウゾクカモメが卵を狙いにくると一斉に声を上げて追い払っています。波打ち際では「海に入ろうかな、どうしようかな」と何羽ものペンギンがウロウロ。安全かどうかよく分からない海に一番に入るのは嫌らしく、お互いに様子を窺っているさまは人間にそっくりです。
巣がある場所から海までの道のりには「ペンギン・ハイウェイ」。人間も雪の中を歩くときは前の人が歩いた跡を辿って歩きやすく道を作りますが、ペンギンも一緒。そして、正面から別のペンギンが来ると、ちゃんと止まって、うまくすれ違うのです。もちろん、ここではペンギンが優先ですから、我々が対面してしまった時にはペンギンに進路を譲ります。「5メートル以内には近づかないで」と言われるのですが、こちらが気にしていてもペンギンの方からお構いなしにやってきます。それほどまでに、南極のペンギンたちは人間を恐れとして認識していないわけです。この環境を守る為にも、私たちは「お邪魔する」という気持ちで毎日を過ごしました。
寒さを忘れるほど楽しくて、時間をも忘れるほど夢中になる南極。とはいえ、南極はなかなかに遠い!最大の難所はドレーク海峡。船で越える場合は約2日間かかり、さらに荒れることで有名。南極への旅を考え始めると必ずぶつかる心配事でしょう。
ところが今回は、チリ・プンタアレナスからの飛行機に乗り、たった2時間で、海峡をひょいっと超えてしまう新たなアプローチで南極へ到着。拍子抜けしてしまうほど、あっさりと南極へ辿り着いたのです。
その時に思ったのは、
「ドレーク海峡の荒波を乗り越えてこそ、南極へ着た達成感があるのでは?」
「ドレーク海峡を船で越えることも、南極への旅の醍醐味ではないか?」
「そもそも、こんなにあっさり辿りついてしまってよいものか・・・」などなど。
一方で、南極が少し近くなり、船が苦手でも行ける道が開かれていることは嬉しくもありました。
「海から行くか?空から行くか?」私自身にとってはなかなかに難しい問いかけになりそうです。(江間)
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