ヒマラヤの桃源郷
昨日、アメリカのテレビ取材班がヒマラヤの山中で幻の雪男「イエティ」の足跡を発見したというニュースが流れた。かつては、人類未踏の秘境と呼ばれたような場所でも素人の旅行者が訪れる事ができる時代になり、ネッシーを始め、こうした伝説も最近はあまり耳にする事が少なくなりつつある。もちろん現実としてこんな生物が実存する可能性は低いのだろうが、ヒマラヤのような数少ない秘境だからこそ、そんなロマンも持っていたいものだ。
さて、ヒマラヤと言えば、先日エベレストに迫るトレッキングの紹介をしたが、そのヒマラヤを西に進んだパキスタン領内、中国との国境に程ちかいところにフンザという場所がある。
標高2,500m近くあるが、もちろんイエティが出てきそうな場所ではなく、幾つかの村はあるが、その風景は、数百年前の日本の農村地帯を思わせる昔ながらの暮らしが営まれている。特にピンク色の杏の花が咲く春の時期は、特に美しい。そして何よりも良いのは、人だ。パキスタンは、残念ながら現在政情が揺れてはいるが、現代社会や世俗の世界とは地理的にも文化的にも切って離されたようなフンザ地区は、幸いにも蚊帳の外だ。花、村や山がみどころで、ちょっと変わった用水路ウォークでその景勝を楽しむのだが、フンザを一番フンザらしいと感じるのは、そこの人と触れ合った時だ。どこまでも素朴なのである。フンザは平均寿命が高い事は、国内でも有名だが、なるほどなと頷ける。済んだ空気と美しき景色と善き人々、これらに囲まれて何のストレスもなく生きていけたら、寿命も伸びる事だろう。
中国の詩人陶淵明が、著作「桃花源記」に登場させた桃の木を中心とした自然に囲まれた農村地帯を東洋の理想郷「桃源郷」の語源になった。この陶淵明が21世紀に入って、フンザを訪れていたら、どんな散文を書いただろうか。桃の代わりに杏の木が多いフンザを杏源郷とは呼ばないだろうが、ユートピアのインスピレーションは得られたかもしれない。少なくても、ムシャラフ氏を巡る葛藤とは無縁だ。イエティ騒動とも無縁だ・・・。
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