カラヴァッジョの道の続き
実は、この度、カラヴァッジョの作品を訪ねるツアーを新たに発表した。その名も「カラヴァッジョの道」である。カラヴァッジョの故郷でもあるミラノ近郊のカラヴァッジョ村や周辺には巨匠の足跡らしき物はあまり見当たらないので、ツアーは、カラヴァッジョが上京して徐々にその名を高め始めるローマからスタートする。
カラヴァッジョが住んでいたナヴォーナ広場界隈には、彼の出世作となった「聖マタイ伝」の三連作が当時のまま飾られているサン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂がある。その三連作の中でも特に傑作と誉れ高いのが「聖マタイの召命」だ。昨日紹介した「エマオの晩餐」同様に、宗教画でありながら、現実のようでもあり、一税吏であったマタイが突然キリストから召し出される場面のドラマ性が人物や明暗によって、劇的に掻き立てられている。同じ聖堂内にある「聖マタイと天使」と「聖マタイの殉教」もまた、見応えのある作品だ。
ローマで殺人を犯したカラヴァッジョは、しばし地方部に身を隠した後、当時スペインの支配下にあったナポリに逃れ、スパッカ・ナポリの雑踏に身を潜める。この地でもいくつか傑作を残したが、最も名高いのは市中心部に位置するピオ・モンテ・デラ・ミゼリコルディア聖堂の「慈悲の七行」であろう。一枚の絵でありながら、その中には七つの主題(慈悲の七行)が巧みに配置されている。
カラヴァッジョは、その後、ナポリを離れてマルタ島を目指した。本当はツアーもその動きに沿いたかったが、マルタを追われた後は、またシチリア島に戻ってくるので、ツアーはナポリからシチリアを経由してマルタへ向かう行程だ。ローマを追われ、マルタも追われて、人生の希望も薄くなりつつあったと思われるカラヴァッジョが晩年を過ごしたシチリアでは、彼が実際に滞在したメッシーナやシラクーサで作品を鑑賞する。このシチリア時代の作品は、一目で初期のローマ時代の作品との違いが分かるだろう。すなわち、デッサンが粗くなり、画中を貫いていた一筋の光は潰えそうであり、それを覆うような闇は一層濃くなっている。それは、巨匠自身の人生の投影とやはり考えたい・・・。ローマやナポリと違って静かなシチリアの小さな美術館や教会でこの作品を目にすると、巨匠の苦悩もすぐそばに感じられるだろう・・・。
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