2009年6月18日 (木)

アーサー王の続きと過去の思い出

前回記事「アーサー王と円卓の騎士達」の続きから

Hohenschwangau アーサー王伝説は、聖杯探求の物語と結びつけられたので、アーサー王と円卓の騎士達の足跡(と呼ばれる物)はイギリスに留まらず、広くヨーロッパ(特に北方)にあったりする。ワーグナーが「パルシファル」や「ローエングリン」といったオペラを書いたのも他の騎士道物語に事欠かないドイツにおいてですら、アーサー王と騎士達の物語が定着していた証拠とも言えるだろう。右の写真はドイツ南部、かの有名なノイシュヴァンシュタイン城の近くに位置するホーエンシュヴァンガウ城(右下の城)である。このお城はノイシュヴァンシュタインを建設する事になるルートヴィヒ二世が幼少期を過ごした城であり、聖杯の騎士ローエングリンゆかりの城だと言われている。

しかし、あくまでもアーサー王はブリテンの王である。伝説の本場やゆかりの地もブリテン島に多い。

Tintergel_castle2 伝説上のアーサー王の出身地はブリテン島南東部に伸びるコーンウォル半島の北部に位置するティンタジェルだと言われている。アーサーはこのティンタジェル一帯の領主ティンタジェル公の息子として生まれた。ティンタジェルは海に向かって崖が続く地理が続いているが、恐らく風雨の浸食によって陸地から孤立化した奇岩が一つある。そこにティンタジェルの城跡が残っている。城を陸側から眺めても、陸を城側から眺めてもなんとも神秘的な風景が見られる場所。ここでアーサーが生まれ、魔導師マーリンに見出された事も信じられる気持ちになる。

ちなみに、このティンタジェルの陸と城の境の下にマーリンの洞窟と呼ばれる小さな洞窟がある。普段は砂浜から入れる洞窟なのだが、潮を満ちてくると波が洞窟の中に押し寄せて来る。この洞窟は反対側でも海と面しているので、実際にはトンネル状になっている。そのトンネルの真ん中あたりにぎりぎり波が押し寄せない高くなった場所がある。そこでアーサー信奉者のイギリス人に率いられた国際部隊(色んな国の人10人ぐらい)と共に夕刻から洞窟に入り、潮が満ちてくるのを待った事がある。(注:危険なのでまねしないで下さい。当然ツアーでも行っておりません。)

Merlins_cave正直私はそこまで敬虔なアーサー信奉者ではなかったので、この時の経験は今振り返っても思い出深い。ただでさえ寒い冬のイギリスで、夕方から洞窟に入って行った。アーサー信奉者(以下リーダー)曰く、ここで極限の体験をする事により、マーリンの境地を垣間見る事が出来るとの事であった。マーリンの境地よりも暖かい毛布とコーヒーの方が魅力的というのは私を含めた他の者の共通した気持ちであっただろうが、もちろんリーダーの一点も曇りがない目を見ると、誰もそんな事を言えなかった・・・。1時間が過ぎて、徐々に波が洞窟の中に入って来始めた。当日は雨であったので、外では岩にぶつかる波の音も響き始めていた。どうなる事かと暗澹たる気持ちを誰もが抱き始めていたが、満潮になるといよいよ荒い波が洞窟の中にも押し寄せ始めた。我々が立っていた洞窟の中のちょっとした高台は絶対、波が直撃しないとリーダーは断言していたが、頻繁に飛んでくる水しぶきを受けながら、マーリンのご加護を祈る気持ちになっていた者も少なくなかったようだ。もう寒さなんて吹き飛んでしまう極限の状況であった。波がピークに達した時にリーダーが何か呪文のようなもの(マーリンの?)を唱えていたが、すごい音でそれすら聞き取れなかった。

そんな極限の状況の中、しばらくすると波は引き始め、洞窟に入って数時間後に無事脱出?する事が出来た。宿に戻って飲んだコーヒーの味は一生忘れないであろうおいしさであった事は言うまでもない。(絶対まねしないで下さい・・・)

余談でアーサー王やマーリンから話は逸れるが、このアーサー信奉者のリーダーはシェイクスピアの信奉者でもあり、後日同じコーンウォル半島のダートムーア(霧が濃くて行方不明者がよく出る丘陵地帯)に連れてかれた。シェイクスピアの「リア王」の中で、全てを失ったリア王が荒野の中で雨に打たれながら、「風よ吹け、雨よ打て、雷よとどろけ・・・」と自身の運命を呪う場面があるが、この場面のリア王の心境に迫る為にあえて悪天候が多い時期にダート・ムーアに行き、豪雨の朝に荒野の散策に連れ出された。寒いわ、濡れるわ、視界は数メートルしかないわ、でまたもや極限の状況に置かれた私達は、自身の運命を呪ったリア王の心境にかなり深く共感できた事は言うまでもない・・・。

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