2009年8月26日 (水)

イシククル湖(キルギス)

Ysukkol 先月クルマンベク・バキエフ氏がキルギスの大統領選で再選され、続投が決まった。中央アジアには独裁色が見え隠れする長期政権が多いので、結果自体に特に感傷はないが、キルギスと言えばあの湖がある国だ。イシククル湖。

キルギスは周辺の国と違って国内に砂漠はなく、緑と水と山に恵まれた美しい国だ。そのキルギスの天山山脈に囲まれた北東部海抜約1,600mのところにイシククル湖が佇む。東西に約180km、水深は600mにも及ぶ大きな湖だ。琵琶湖の約9倍の大きさを持つ。

イシククル湖は古代にはシルクロードが脇を通っていた。かの玄奘もこの湖に立ち寄り、「大唐西域記」に以下の文章を残している。

「山を行くこと四百余里で大清池についた。周囲千余里、東西に長く南北は狭い。四面山に囲まれ多くの河川はここに集まっている。色は青黒みを帯び味は塩辛くもあり苦くもある。大きな波が果てしなく、荒い波が泡立っている。龍も魚も共に雑居し、不思議なことがときおり起こる。それで往来する旅人は供え物をして福を祈るのである。魚類は多いが、あえて漁をして捕獲するものもない。」

Brana 玄奘の言葉通り、周辺の山から流れ出す川のほとんどがイシククル湖に注いでいる。しかし流れ出す川は一つもない。湖の水位自体は近年それ程変わっている訳ではないので、科学的に考えればその分水が蒸発しているという事だが、地元の人々は色んな説を信じてきたらしい。ひょっとした玄奘の書いている不思議な話もその辺りかもしれない。このような高度に位置しているにも関わらず塩分が濃いのは先日紹介したウユニ塩湖の水があった時代の姿と考えれば分かりやすいだろう。キルギスはウユニと違って温暖な地中海性気候に恵まれているのでイシククル湖が干上がった塩湖になる事はないだろうが。

周囲には冬になると凍る氷河湖も多いが、イシククル湖は冬でも凍らない。これは科学的には水が塩分を含んでいる為だが、昔の人々はこの事も不思議な現象の一つとして捉えていた。イシククルという名前の起源は現地の言葉で「熱い海」なのである。

Ysukkol_rockpaintings もう一つ不思議なのがこの湖の底だ。最大深度は668mにも及ぶこの湖の底には何があるのか。イシククル湖の砂浜には以前からたまに陶器やその破片が打ち上げられる事があった。湖底には太古の文明の跡が眠っているのだろうか。既に玄奘の時代(7世紀前半)にはそれなりの湖であったはずなのだから、それより前の時代の物であれば考古学的な価値はかなり高い。実際にイシククル湖の湖底は何度か探索が行われ、その結果いくつかの遺跡が発見された。いずれも時代を隔てた遺構らしく、結論としてイシククル湖の湖面は緩やかに上昇していると推測されている。前1世紀頃この一帯で勢力を張っていた烏孫の根城も湖底にあるらしい。さすがにファラオの巨像なんか探してもないと思うので「海のエジプト展」とまでは行かないが、「湖のキルギス展」を開けるぐらいには色々沈んでそうなので本格的な探索を継続してほしいところだ。

Ysukkol_sunrise_2 歴史の観点からイシククル湖を紹介したが、この湖自体山と緑に囲まれた美しい湖なので、あまり考えなくても楽しめるだろう。ツアーで行く場合は通常湖畔に宿泊するので、可能であれば是非夜明け前に湖岸に出て、湖越しのご来光を仰いでみると良い。とても神秘的な風景がご覧頂けるだろう・・・。

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