2009年11月22日 (日)

サン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂(ローマ)

St_luigi_di_francesi3 今回の視察レポートはダイジェスト版という事で二回目で早くもローマに到着する。ロンドン、パリ、ローマは日本人が最もよく訪問するヨーロッパの都市だが、この三都市の魅力は二度、三度訪れてやっと噛み締められる非常に奥深い都市だと思っている。ローマに来るのは今回で5回目だが、今回もまた新しい出会いに事欠かなかった。

さて、そのローマで一番初めに訪れたのが今回のハイライトでもあるサン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂だ。

St_luigi_di_francesi2 この聖堂はフランチェージ(=フランス人)の聖人ルイの為に16世紀に建てられた。ナヴォーナ広場の一つ裏の通りにあり、カラヴァッジョが滞在していたと言われるマダマ宮殿は通りを挟んで斜め向かいに位置している。

ローマに来て少しずつ名前を挙げたカラヴァッジョに1600年完成して間もないこの聖堂の左奥にあるコンタレッリ礼拝堂装飾の仕事が舞い込んだ。テーマは後に福音書記者となる聖マタイ。紆余曲折を経ならがもカラヴァッジョは、人々の想像を超える名画を仕上げた。

Caravaggio_wp コンタレッリ礼拝堂には、聖マタイをテーマに描かれたカラヴァッジョの壁画が三点並んでいる。左側から「聖マタイの召し出し」、中央に「聖マタイと天使」、右に「聖マタイの殉教」がかかっている。いずれもカラヴァッジョの名画に数えられるが、特に当時のローマに大きな反響を呼んだのが左側にある「聖マタイの召し出し」である。この作品はキリストが徴税人であったマタイを使徒として召し出す場面が描かれている。キリストの情報から差す神々しい光とその光に照らし出される卓上の人々。この絵におけるマタイは、左側で机に向いてうつむき、手元でお金を数えている青年。影に包まれた青年は正に光によって導き出されようとしている。

St_luigi_di_francesi4 「聖マタイの召し出し」と向かい合う「聖マタイの殉教」は、アレキサンドリアでマタイが殉教する場面を描いたもの。ここでも画面の中に光と影を配した絶妙な構図は、恐怖が支配するこの場面のドラマ性を最大限に高めている。また、マタイを手にかける中央の若者の後ろにこの場面を冷静に見つめるカラヴァッジョ自身の肖像が闇の中に描かれている。

中央の「聖マタイと天使」はカラヴァッジョが当初描いた作品が注文主の気に召さず、書き直された作品である。当初の作品はドイツにあったが第二次世界大戦の戦火で消失してしまった。この二番目の作品の方が俗よりも聖に近いマタイが描かれている。最初の作品で問題となった突き出た足もここでは闇に包まれている。

このサン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂の作品は、当時のローマで大きな反響を呼び、カラヴァッジェスキと呼ばれるカラヴァッジョの模倣者が大量に出現したと言う。当の本人は模倣されるのを嫌ったようだが、退廃的とも言われたルネサンスの残照であるマニエリズム替わって、ここに新しいバロックの時代が幕開けたと言っても過言ではないだろう・・・。

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