ギリシャ彫刻
さて、ギリシャ彫刻である。光が当たるルーヴルの華やかな舞台で世界中から巡礼者が訪れる「ミロのヴィーナス」や「サモトラケのニケ」に対し、それに勝るとも劣らないギリシャ本土に残された彫刻達は、アテネの考古学博物館や本土の各地の博物館に散らばっている。
ギリシャには各地に2,000年から3,000年の歴史を誇る遺跡が数多く残っている。アテネのアクロポリスを始め、オリンピア、デルフィ、エピダウロスなど遺跡を訪れた方も多いだろう。しかし、遺跡だけ見て帰ってしまった人もいるのでは?それでは勿体無い。ギリシャの遺跡は博物館とセットで見なければ意味がないとすら言えるかもしれない。何故ならギリシャ美術の彫刻達は、そうした博物館の中で静かに佇んでいるのだから。右上の写真は、オリンピア遺跡の博物館にある「幼子を抱くヘルメス」像。
フィレンツェのアカデミア美術館にある人類の至宝と呼ばれる中央展示と差替えても、来館者をがっかりさせる事はないだろう。均整の取れたプロポーションで表されたヘルメスは、古代ギリシャ彫刻の傑作。
神託の地デルフィの博物館にも見逃せない彫刻がある。「御者像」がそれだ。大理石の像と比べると艶は見劣るが、青銅の像は現存している物が限られ、その美術的価値は大理石の像を上回るとさえ言えるかもしれない。
数年前の愛知万博で同じ古代ギリシャ美術に属する青銅像がパビリオンの主役を務めていたが、その像と差替えてもそん色はないだろう。これ程保存状態の良い青銅像は、そう多くはない。
アテネの考古学博物館に目を移してみよう。市の中心の北方に位置するこの博物館は、エジプトのカイロやシリアのダマスカスと並ぶ三大歴史博物館(個人的な選定)の一つ。近年地方の物は地方にという流れがあるが、それでも各地から運び込まれた古代の至宝が並ぶ館内は見逃せない。その博物館にあって人々の目を惹きつけずにはいられない像が「アルテミシオンのゼウス(ポセイドン)」像である。この像は神が正に雷を投げようとしている瞬間を捉えた物であるが、その緊迫した一瞬が像に見事に表されている。ルーヴル美術館の階段の踊り場に置いたら、尚見栄えする事だろう。
ここでは紹介しきれないが、アテネの考古学博物館にはこれ以外にも複数の傑作がある。ルーヴルにも、大英博物館にも、エルミタージュに出しても恥ずかしくない。
ギリシャは遺跡や神話、エーゲ海の島も良いだろう。しかし、本土に残った古代ギリシャ美術の至宝もお忘れなく・・・。
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