ドレスデンでフェルメール特別展開催中!(ドイツ)
ここ一年美術館や博物館の特別展ビジネスに携わる方とお話したりする機会に恵まれたが、21世紀に入ってからどこでもほとんど休まずに特別展を開催する為、どこも集客に苦戦する面もあるという事を聞いた。しかし、そんな中でもドル箱とも言われているのがフェルメールらしい。確かに日本でのフェルメール人気は絶大で、過去にフェルメール作品が来日している展示会はどこも人の波でもうフェルメールが来ても絶対行かないと心に誓ったものだ。
さて、この秋ドレスデンのアルテマイスター絵画館で「フェルメール展」が開催される。元々アルテマイスター美術館が所蔵する「取り持ち女」「窓辺で手紙を読む少女」に加え、エジンバラのスコットランド・ナショナル・ギャラリー所蔵の「マリアとマルタの家のキリスト」、オランダのマウリッツハイス美術館の「ディアナとニンフたち」がドレスデンに集う。
この4作品に共通している事は、いずれもフェルメールの初期の作品(1654-1659年頃)である事だ。「マリアとマルタの家のキリスト」、「ディアナとニンフ」はフェルメールが宗教画や神話画を描いていた1654-1655年頃(22-23歳)の出発点とも言える作品。一般的なイメージである後期の室内単身女性像とイメージは異なるが、ここからのフェルメールの発展を思いながら眺めてみると興味深い絵である。この若さで既にこれだけの作品を仕上げていたのだ。
一方「取り持ち女」「窓辺で手紙を読む女」は、前述の2作品の少し後、1556-1659年頃に描かれた作品。それ程時は流れていないが、明らかな進化が感じられる。
「取り持ち女」はフランドルらしい風俗画である。主題は娼婦を買う男、そしてその奥でにんまり微笑む黒ずくめの女性だ。この絵で最も目を引くのがその黒ずくめの女性だろう。何とも言えない深い表情が瞬間的に捉えられている。一般的に和訳される「取り持ち女」もこの売春を取り持つ黒ずくめの女の事を指している。ちなみに左側に描かれているこちらを向く男はフェルメールの自画像とも言われているが定かではない。個人的には立っている位置や光の加減、服装が偶然にもほぼ同じ年に描かれたベラスケスの「ラス・メニーナス」(マドリッド/プラド美術館)に登場するベラスケスの自画像を思い起こさせられたが、実際はどうだろうか。
最後の一点が「窓辺で手紙を読む女」である。我々にも馴染み深いフェルメール得意の室内単身女性像の最初の作品である。光の加減やディテールにまだ粗さはあるものの、日本人好みの「わび・さび」を感じさせる静謐な空間構成が目を引く。窓に反射する女性の切なげな表情もたまらない。手紙の内容が期待していたものに及ばなかったのだろうか。この作品には当初女性の右上の空間を始め、他にも物が描かれていたようだが、フェルメールが塗りこめたらしい。
以上の4点のフェルメールは、現存し一般公開されているフェルメール作品の中で最も初期の4点であり、今回のアルテマイスター美術館での特別展も正式には「初期フェルメール展」となっている。過去に来日した作品もあるが、この4作品が一つの空間に並ぶ様は、ファンでなくても楽しめるだろう。心の誓いはどこへとやら、私もそこに駆けつけたい・・・。
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