【共通テーマデー】私のパワースポット
今月のテーマはパワースポット。その場所に立つと胸に不思議な気持ちが湧き、厳かな空気が流れると感じる場所はいくつかある。過去の記事で紹介したストーンヘンジ、パンテオン、タネ・マフタ(ニュージーランド)、アララト山(トルコ)、ウユニ塩湖(ボリビア)、イシククル湖(キルギス)などもそれぞれに思い入れがあって該当すると思われるが、今回紹介したいのはギリシャのデルフィ(デルフォイ)だ。
デルフィは、ギリシャ中部のパルナッソス山(2,547m)の中腹に位置する遺跡。
オリンポス山信仰にみられるように、古代ギリシヤには山岳信仰が息づいていた。それ故、険峻な峰を誇るパルナッソスが信仰の対象になったのも自然な流れであった。詩、芸術、学問などを司るアポロンがデルフィの主神として崇拝されるようになったのは紀元前8世紀頃だと言われている。以後、多くの詩人や学者がこの地を訪れるようになった。
このデルフィではピューティアと呼ばれる巫女達が狂ったように動き回り、怪しい言葉をうわごとや叫び声のように発する神託がいつからか行われるようになり、評判になるにつけてどんどん回数も増した。デルフィの神託は、ソフォクリスの傑作「オイディプス王」にも出てくるのでご存知の方も多いだろう。現実の世界でも神託は重きを成しており、ペルシャ戦争中のギリシャ各地の為政者達、マケドニアのアレクサンドロス(大王)からソクラテスやプラトンのような学者まで幅広い人が神託を聞きにデルフィを訪れた。
今日のデルフィも恐らく二千五百年前とそう変わりない風景の中に静かに佇んでいる。遺跡の前に広がる渓谷とそこに連なる広大なオリーブ園、岩肌が剥き出しのパルナッソス山を背にした遺跡は建築部分はだいぶ失われてしまったものの、当時の面影は十分に残している。神託が行われていたアポロンの聖域は、遺跡の入口から蛇行する参道を少し上った所にある。教科書に登場するような古代の有名人達もきっと同じように上った事だろう。敗色濃厚であったペルシャ戦争中にこの地に救いを求めてやってきたアテネの為政者達の気持ちはどうであっただろうか。一方で神託を一笑に付したアレキサンドロスは物見気分で参道を歩いたのだろうか。多くの学問の基礎を生んだソクラテスやプラトンらの哲学者達は神託にどのような意味を見出していたのだろうか。
そして聖域に着く。目を瞑って往時の姿を想像してみる。巫女達が立ち上る煙のようなものを吸って、狂気をおびたかのように動き回り、奇声を上げる。脇にいる神官がその奇声の中から何かを読み取り、それを言葉にして書き、参拝者に与える。
この煙の謎は近年解明されつつあるので、ナショナルジオグラフィックのビデオでどうぞご覧下さい。その煙を結果的に呼び起こしたのはアポロンの力だったかもしれない。人間を越えた力が今もデルフィに宿る。
【共通テーマデー「私のパワースポット」】
〔添乗見聞録編〕
〔倶楽部ユーラシア編〕
〔ぶらり秘境探検隊編〕
〔ろまねすく通信編〕
〔船の旅便り編〕
〔パゴタの国からミンガラバー編〕
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