2011年6月23日 (木)

過去を今に、そして今を未来に、アンコール・ワット(カンボジア)

Angkol 入山規制を盛込んだ屋久島の条例案が一昨日否決され、再度見直すというニュースが流れていた。同じ観光業に身を置く者として出来る限り多くの方をご案内したいという気持ちは分かるし、町の経済に責任を持たなければならないという気持ちも分かる。しかし、世界遺産の定義にあるように、未来の為に観光資源を保護するという行為を我々観光業従事者や観光客が担って行かなければならないだろう。ここで思い出すのがアンコール・ワットだ。4,5年前からブームが起きて今ではすっかりお馴染みになったクメールの代表的遺跡は、上智大学アンコール遺跡国際調査団が中心となって過去を現在に蘇らせると共に、現在を未来に引き継ぐ事業にも尽力してきた。今日はそんなアンコールについて触れたい。

Angkor_west1 アンコール・ワットの正面入口である西参道、濠を貫くこの道を渡る時に私は現実の世界から壮麗なるアンコールの世界に渡った気がした。この西参道は往来が多く、濠と接しているだけに損傷も大きく、長年に渡って修復工事が続けられてきた場所。1980年からアンコール遺跡の調査研究と保存修復活動に取り組み始めた石澤良昭氏率いる上智大学アンコール遺跡国際調査団も調査を重ねた後に西参道の修復に本腰を入れて活動している。1990年代後半から本格化した活動は今尚継続中だ。

Angkor_west2 西参道の全長は約200m。左上の写真を見ると普通の現代的な道のようにも見えるが、事はそう簡単ではない。まず始めに古くなった参道の石材を解体する事から始め、それから新しい石を積んでいくのである。○○建設にお願いすれば物の一日でも作ってしまいそうなものだが、参道は単なる道ではない。ヨルダンのペトラの記事でも触れたが、寺院に至るまでの道もアンコールを知る上で欠かせない舞台装置の一つだと思う。私の考えが正しいかどうかはともかく、西参道の修復には現代の建築材料ではなく、約500年前の建設当時の材料を用い、什器を使用せず手作業で修復を行っている。

Angkor_west3 そして修復作業も熟練の職人ではなく、勉強中の人も含むカンボジア人スタッフが進めている。時間はよりかかるが、石澤先生率いるアンコール調査団の理念の一つにカンボジア人専門家の育成があり、その理念に沿ってスタッフも選定されている。海外のプロフェショナルがやってきて短期的に作業を進める事は可能だが、未来の事を考えるとノウハウを地元に息づかせる事が重要。納得の人選だ。

Angkor_west4ご存知の方も多いと思うが、当社では2003年より上智大学アンコール遺跡国際調査団の団長である石澤良昭先生のご協力を頂いて、先生が同行するアンコールの旅を計18回に渡って実施して来た。先生の解説を交える事によってお客様により豊かな旅を提供したいという気持ちはもちろんだが、遺跡の保存と未来の為の活動される先生のお考えに賛同した部分も少なくない。先生が同行するツアーでは、西参道修復に要する昔の石材一つにかかる費用70ドルをご参加の皆様の旅行代金に含めさせて頂いてきた。先生同行の旅には過去600名以上のお客様にご参加頂き、その人数分の石を西参道に贈る事が出来た。これもひとえにご協力頂いたお客様のおかげであり、この場を借りて御礼申し上げたい。

Angkor_ishizawa_2 昨年上智大学長を引退された石澤先生はアンコールの為にますます活発にご活躍されていて、来週末の7月2日(土)には札幌の講演会でアンコールについてお話される予定。少し先だが、10月2日(土)には東京の当社主催の講演会にも出演頂く予定。昨年新聞の一面も飾った廃仏発見のような華やかなニュースは人目を引くが、個人的には今日紹介した目立たないながらも未来の為にご尽力されている真摯な姿勢と実績にこそ敬服せずにはいられない。

7月2日札幌の講演会「アンコール・ワットの謎に挑戦」はこちら
10月2日東京の講演会「ローマからアンコールへ」の詳細はこちら
石澤先生同行アンコールの旅はこちら

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