2011年12月12日 (月)

アラブの英雄サラディン(サラッフディーン)

Saladin1 新聞を眺めていたら、評判の図書として塩野七生氏の「十字軍の物語」の広告を見かけた。地中海各地の著書を綴る氏の著書はいくつも読んできたが、これもまた興味深いテーマだ。

十字軍。現代に至るまで宗教戦争の代名詞のように用い続けられるある意味忌まわしき言葉でもあるが、個人的にこの言葉に触れる時に思い出されるのが十字軍そのものでなく、その十字軍を迎え撃ったサラディン(サラッフディーン)である。

Saladin2 サラディンは1138年頃、現在のイラクで生まれ、その後バールベックやダマスカスで少年時代を過ごした。既にエルサレムを攻略した十字軍王国を始め、同じイスラム教徒の諸勢力が乱立していた中近東一帯では戦乱が絶えなかった。皿ディンも幼少の頃から戦場での経験を積み、エジプトの攻防で一躍名を挙げ、アイユーブ朝を開いた。そしてその後もシリアやパレスティナ地方で十字軍とも幾度となく対峙し、その多くの戦いで勝利を収めた。

Saladin3 ここまで書くとよくいる戦争に強い軍人とそう変わらないが、サラディンの素晴らしい所はその人柄であった。十字軍が容赦なくイスラム教徒の捕虜を処刑していく中で、サラディンはキリスト教徒の捕虜を解放していった。内部からは反対意見もあったようだが、それでも一貫して解放し続けたと言う。生活も至って質素で蓄財もせず、貧しい人への施しも惜しまなかったそうだ。それ故敵見方関係なく尊敬された人物であり、キリスト教徒の間に伝わるサラディンの名も敬意を込めて読み上げられるものも少なくない。敵将に対しても友として接した談話も少なくない。

実写で見た「キングダム・オブ・ヘブン」という十字軍映画に登場するサラディンのイメージはその長い髭故か、三国志の関羽のイメージと個人的には重なったが、生きた当時から今日まで尊敬(神格化)されている辺りは似ていると言えるだろう。

サラディンは現在生涯の長い時間を過ごしたダマスカスのウマイヤドモスク隣の霊廟に眠る。未だに彼の霊廟への参拝者は後を絶たない。サラディンが生前活躍したシリア、エジプト、パレスティナ、イスラエル、レバノン等どの国も問題を抱えているが、寛大な心を持って異教徒と接した中世の英雄の精神を思い出しながら、明るい未来に向かって欲しいと切に願う。

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