黄金のミケーネ(ミュケナイ、ギリシア)
ホメロスの古典「イーリアス」の中で描かれるトロイア戦争は、時代を隔てても人々が惹かれ続ける古代ロマンの象徴の一つと言えるでしょう。そのトロイア戦争では、ミケーネ王アガメムノンを総大将とするギリシア連合軍がエーゲ海を渡って、現在のトルコにあるイーリアス(トロイ)を攻略するところ粗筋です。長らくホメロスのこの話は伝説上の物と考えられていましたが、19世紀にハインリッヒ・シュリーマンが「イーリアス」に基づいてトロイを発見した話はあまりに有名です。しかし、シュリーマンの功績はトロイを発見した事に留まりません。もう一つの都も発見しました。それがギリシアのミケーネ(ミュケナイ)です。
ミケーネはギリシア連合軍を率いたアガメムノンの都であり、古代ギリシア文明の中で独自の鉄器文明を築き、前15世紀頃から13世紀頃のギリシアはこのミケーネ文明が支配的であった。
ミケーネはギリシアの南部に伸びるペロポネソス半島の東部に位置しています。シュリーマンは文献から大よその位置を見極め、オリーブの木が茂る丘陵地帯の中にミケーネを発見しました。1872年の事です。そしてこの遺跡の中にお墓を発見し、これこそアガメムノンの墓と興奮は最高潮に達したようです。そしてついにそのお墓の埋葬品の中に黄金の仮面を発掘しました。シュリーマンはこの仮面を「アガメムノンの黄金のマスク」として発表しましたが、その後の調査でアガメムノンの時代より古い物である事が現在では分かっています。
しかし、例えアガメムノンの存在に直結するするような物が見つからなかったとしても、ミケーネの発見そのものの価値は色褪せません。重く男性的であったミケーネ文明の象徴とも言えるミケーネの「獅子の門」は現在でも遺跡への入口の一つで、くぐると古代世界に迷い込んでいくかのような不思議な錯覚に襲われます。
また、遺跡からちょっと離れたところにはアトレウス家の宝庫と呼ばれる建築もあります。アトレウス家とはアガメムノンが属していた王家の事です。残念ながら宝は既に持ち去られていますが、重い石を積んだ円錐形の建築にミケーネ人の技術力の高さを見てとることができます。
ギリシア観光の黄金ルートには入っていない場所ですが、ギリシアの歴史を語る上で欠かせない場所の一つです。是非一度訪れてみて下さい。
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