バッサーノ・デル・グラッパ(イタリア)
今日紹介する町は、イタリア北東部の山の麓に位置する小さな町バッサーノ・デル・グラッパです。ヴェネツィアが州都のヴェネト州に属し、ヴェネツィアからは車で1時間強の距離にあります。古代ローマ本国の北の国境であったルビコン川の北に位置する事もあって、紀元前の歴史らしい歴史はありません。中世に入って少しずつ町が形成され、農業や工業で中規模の都市国家に育ちました。ナポレオンがアルプスを越えてイタリア半島を侵略した際には、ナポレオン自身がこの町にしばらく滞在していた程です。
しかし、近代に入って第一次世界大戦を迎えると、バッサーノ・デル・グラッパは激戦地となり、多くの建造物が失われました。また、現在の町の名の由来でもあるグラッパ山において数千もの兵が命を落としました。その記憶を留める為に、バッサーノ・ヴェネトと呼ばれていた町は、バッサーノ・デル・グラッパに改名しました。この時のイタリア軍には著名な作家が従軍していました。
その作家はアーネスト・ヘミングウェイ。この戦争の記憶が名作「武器よ、さらば」を生みました。ちなみにヘミングウェイは、この町で救急車両の運転手をしていたそうです。その後第二次世界大戦でも大きな戦禍を被りましたが、人々の強い気持ちでかつての町が蘇り、今日では世界中から旅人を迎えています。
バッサーノ・デル・グラッパの象徴は、町を流れるブレンタ川にかかるヴェッキオ橋です。このヴェッキオ橋は、ルネサンス期の代表的な建築家であり、ヴィチェンツァやヴェネツィアなどに多くの建造物を残したパッラーディオが1569年に建設したものです。その後の歴史を通じて何度も破壊の憂き目に合いましたが、町の象徴としてすぐに再建され、今日に至っています。ちなみにフィレンツェにある同名のヴェッキオ橋と違って、橋の上にはお店もなくさっぱりしており、川と町の風景を楽しむ事ができます。ブレンタ川はアルノ川より水質がいいと思われるので、清涼感溢れる風景が楽しめます。
バッサーノ・デル・グラッパの名を高めているのが、イタリアを代表する食後酒であるグラッパです。イタリアでしっかり食事をすると、ウェイターが食後に「グラッパは飲む?」とよく聞きます。グラッパはアルコール度数30~60度の蒸留酒で、コーヒーの一種と間違えたりしないようご注意下さい。ちなみにコーヒーはグラッパの後に飲みます(コーヒーを先に飲む場合もあります。)強いお酒なので、小さなショットグラスのようなグラスに注ぎ、クイッと一口で飲むのが流儀です。最近は日本のイタリアンでも見かける事が増えているので試してみてはいかがですか。このグラッパは、この地方の特産で町中にはグラッパ博物館もあります。
ブレンタ川の清流のおかげか、バッサーノ・デル・グラッパを歩いていると不思議な清涼感を感じます。是非一度訪れてみて下さい!(福永)
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