スパルタ(ギリシャ)
ギリシャの数多い町の中でもひょっとしたら首都アテネよりも名前が売れているかもしれないスパルタ。質実剛健にして強固な軍事国家、そして容赦ない厳格な教育制度からその名を知らぬ人はほとんどいないでしょう。しかし、今日のスパルタの姿はご存知ですか。観光でもあまり立ち寄ることがないので、意外に知られていないと言えるでしょう。今日はそんなスパルタをご紹介します。
スパルタはホメロスの「イーリアス」の中でも頻繁に登場します。トロイア戦争の発端になったスパルタ王妃ヘレナ、その奪還に燃えるスパルタ王メネラオスは、「イーリアス」の主要な登場人物です。しかし、この時期(ミケーネ文明期)のスパルタは、我々が知っているポリス(都市国家)のスパルタとは別物です。
ポリスのスパルタはギリシャ南部ペロポネソス半島の中央部に位置しています。
町を訪れると、町の中央通りから古代の都市跡入口に通じる場所に立っているのが古代ギリシャの英雄レオニダス王です。ペルシャ軍を相手に憤死しながらもその後のギリシャ連合軍の勝利の糸口を作った彼の高潔な武人ぶりは今でもスパルタの誇りです。そのレオニダスの背後に古代スパルタの遺跡が広がっています。
かつてのスパルタの遺跡は今では遺跡と言うよりも農園と言った方が適切かもしれません。かつてのライバルアテネにはアクロポリスの丘のパルテノン神殿を始め、数多くの古代の遺構が残っているのに対し、スパルタには何もありません。それは時と共に失われたものではなく、禁欲的な生活を奨励していたスパルタでは大きな建造物は元々造られなかったのです。そのスパルタの町の上に今はオリーブの林が広がっています。
遺跡の一部に劇場の跡がありますが、もちろんスパルタに演劇のような娯楽を勧んで楽しむ風潮があった訳ではなく、後の古代ローマ時代に築かれたものです。遠くには弱い赤子を捨てたと言われるタイゲトス山脈の姿も見えます。
このように今日のスパルタには何も残っておりません。でも目に見える物はレオニダスの像一つでいいのかもしれません。スパルタにはそれが似合っている気がしますし、スパルタ人達も多くの観光客で賑わうよりは、ひっそりと佇む事こそ本望なのでしょう。(福永)
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