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2009年10月

2009年10月30日 (金)

好奇心(コンク/サント・フォア6)

コンク、好奇心 ロマネスク美術の魅力の一つが、時折見え隠れする遊び心です。
遊びだと思うのは無宗教の現代日本人の感性で、本来は重大な意味があったのかもしれないのですが…

コンクにおける、その好例のひとつがこの「好奇心」と呼ばれるものです。
タンパンの端をめくって向こうから最後の審判や我々を覗き見る人たち。
小粒ながら見逃せません。

なんだかブラインドをめくっているような、あるいはジャッジャッジャーンなんて効果音が聞こえるような…ユーモラスな彫刻です。

なんだか気難そうなロマネスクの教会を巡る旅、こんな小さな発見を楽しみにしてみてはいかがでしょうか?
どうぞ、旅のお供に「好奇心」をつれていくのをお忘れなく!(山岸)

>フランス・ロマネスクのツアーはこちら

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2009年10月28日 (水)

大酒飲み:地獄にて(コンク/サント・フオア教会5)

コンク、サント・フォア教会 キリスト教の「7つの大罪」の中に、暴食はあっても、飲んべえは入っていないのですが、コンクの最後の審判では大酒のみは地獄に落とされてしまっています。

一生涯に飲んだお酒を吐き出すの刑。

逆さまに吊るされて搾り出されています。
彼の下では丸焼きにされる罪人…
地獄は隅々までユーモラスな彫刻で埋まっているので見飽きません。

それにしても、悪魔たちの楽しそうなこと!
所狭しと画面のあちこちで罪人をいたぶっています。

コンクのタンパンを始め、地獄見学の後はいろんな感想が聞こえるものなのですが、「酒飲み」と言われる罪人が見られるのはちょっと珍しい。

指差して、写真を撮って、「ああはなりたくないですね!」と言いながらも、日が暮れれば南西フランスの美味しい食事に、ついついワインが進んでしまうのですが…。

(山岸)

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2009年10月26日 (月)

地獄へようこそ。(コンク/サントフォア教会4)

コンク、サント・フォア教会 蜂蜜色の舞台に、4~5頭身の人々がなんだか入り乱れている地獄。
キリスト教でも仏教と同じように、地獄の責め苦は、焼いたり、つねったり、舌を抜いたり、刺したりと…およそ私たちが思いつく「痛そうなこと」が採用されています。

地獄の中心の玉座に座るのは、閻魔大王ではありません。
地獄を取り仕切るサタンはこれを見よとでも言うように、彼の左手を指差しています。

首にお金の袋を下げた守銭奴(文字通り、「死んでもお金を放さない」)が責められています。他にも、「淫乱」「傲慢」「憤怒」「嘘つき」などなど…地獄には様々な罪人が登場します。

コンクに限った話ではないのですが、教会の入り口の扉上に最後の審判を描くのは、地獄と天国を対比することで、日々の生活を悔い改め、一心に神に祈ることを諭しているのです。

(山岸)

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2009年10月23日 (金)

天国・地獄?(コンク/サントフォア教会3)

フランス、コンク、サント・フォア教会  最後の審判の日、神の前に甦った人々は生前の行いの善悪を量りにかけられて、天国行きか地獄行きかが決まります。

画面左は墓から甦る人々、その下は天国の入り口。
右側は地獄行きが決まってしまった人と、その下は地獄の入り口です。

中央で繰り広げられるのは審判のシーン。
剣を携えた大天使ミカエルと悪魔が死者の魂を天秤(破損により皿だけになってしまいました)にかけます。
善が重ければ天国へ、軽ければ地獄行き。
この人は天国に行けそうなのですが、悪魔が指をかけてこちらに傾けようとしています…。

ツアーでコンクを訪れると、お客様とわいのわいの言いながらこの光景を眺めます。

整然としていて平和な天国よりも、気になるのは大魚の口の向こうの地獄の光景。

次回はそんな地獄の光景をご紹介しましょう。

(山岸)

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2009年10月21日 (水)

伏して祈る聖女(コンク/サント・フォア教会2)

Conques_tympanum1 まずはコンクの主役、聖女フォアです。
最後の審判の時、神に従う義人は天国に招きいれられ、罪人は地獄に突き落とされます。

聖女フォアは天国の側で祈ります。
我々の罪が少しでも酌量されるように。父なる神は全てを創造した右手のみで表されます。

審判の瞬間と同時に、私たちの現世のためにも祈ってくれている聖女フォア。
彼女の後ろには手枷や足枷が吊るされていますが、これは戦に負け敵の奴隷に捕らわれた人々のものです。
実際に、彼女に取り成しを祈り、解放された人々は聖女と神に感謝し、解放後、枷を教会に奉納しましたから、ともに描かれた枷は彼女の奇跡の「信憑性」の高さを演出しています。

タンパン全体を眺めたときに、聖女は、身を投げ出して祈る姿で、キャンバスの端のスペースを有効に活用しているようにも見えてしまうのは、私が無宗教者だからでしょうか。

それにしても、この教会のご本尊にあたるサント・フォア像のきらびやかさとは異なる素朴な姿に清楚さが滲んでいます。

(山岸)

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2009年10月19日 (月)

コンク、サント・フォア教会

フランス南西の山奥にコンクという村があります。フランス、コンク
もとは人里離れて、祈り暮らすための修道院があったのですが、聖地サンチャゴへの巡礼路が栄えるようになると、巡礼の道すがら、修道院がもつ聖女フォアの聖遺物をあがめる人々がやってくるようになり、次第に村を形成するようになりました。

コンクの中心はこのサント・フォア教会です。
秀逸なのが西側入り口の上のタンパンを飾る彫刻群です。
彫刻のテーマは「最後の審判」。その瞬間が悲喜交々に刻まれています。

その中から(独断と偏見により)魅力的な部分に焦点を充ててご紹介していきたいと思います。(全6回)

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2009年10月13日 (火)

巡礼手帳

巡礼手帳 北スペインの旅に出る時、他の添乗員と話している時、
「今回はもらうまいと思うのに、ついもらっちゃうんだよねー」
と会話に登るものがあります。

それとは巡礼手帳。

本来、聖地サンティアゴへの巡礼者の身分を証明するパスポートであり、ちゃんと自分の足や自転車で巡礼したかの証となるものです。
スタート地点となる町の教会や巡礼宿などで拝領し、一日の歩き始め、歩き終わりの町でスタンプを押します。
サンチャゴに着いた時、徒歩なら最低100キロ、自転車なら200キロを歩んで来たことがこの一冊に凝縮されるのです。
なので、一日の移動距離が分かるように、それぞれの日付と地名が入っていればいいというものなので、教会や宿の他、レストランやパン屋のような商店でスタンプをもらうこともあります。

100キロ歩くツアーはもちろんですが、バスでいくツアーでもスタンプはもらえてしまうので、旅の記念についついいつもお客様と一緒に集めてしまうのです。
ツアーだと毎回同じコースをたどっているはずなのですが、その時によってレストランが変わったり、裏通りの巡礼宿が「開いてる!」とばかりに寄ってみたり…

同じ道でもその時々で中身が変わる。
引き出しにだんだんと溜まる巡礼手帳は、それぞれが北スペインの旅の思い出です。

(山岸)

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2009年10月 9日 (金)

イヴの誘惑に秘められた魅力(オータン)その3

フランス、オータン、イヴ、ロラン美術館蔵 「イヴの誘惑」は美しい。

形の良い口元に右手を沿え、囁きかける誘惑の声音は如何様か。
豊満な胸に流れ落ちる、少し濡れたような長い髪。
柔らかな太ももとたおやかに折り曲げた膝、優美な線を描く脛の先にはきっとほっそりとした足首があったに違いない(残念ながら足首から先は無い)。左手でそっとつかんだ果実の枝には美しい蛇が絡まり・・・。

でもやはり、私にとっては「心を鷲摑み!」とまではいかない。
ちょっとずん胴なんじゃないの~?よく見たら二の腕も太めだし・・・と嫉妬深い視線で辛口の評価もしてしまうのは、私が女であるからか。

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2009年10月 7日 (水)

イヴの誘惑に秘められた魅力(オータン)その2

「イヴの誘惑」のテーマは、なんといっても誘惑だろう。

だから、彫刻を見た人々(主に男性)が「誘惑」される彫刻でなければ意味が無い。
そしてただ誘惑されるだけではなく、その誘惑にはどこか背徳の匂いが無ければならない。そちらに踏み込んではいけない・・・でも踏み込まずにはいられない・・・といったような。

「その1」で紹介した夫の発言には「イヴの誘惑から感じるべきこと」が全て表れているということに気づき、改めて驚く。

「うわー、なにこれ」=一目見たときに(男性の)気持ちをぐっとつかむ妖艶な魅力
「超怖いね!」=アダムに囁きかけるイヴの表情に秘められた、闇へと引き込む引力に感応?
「なんかゾクゾクするよ!」=どういうわけかわしづかみにされてしまう男心
「思わず見ちゃうよね~」=その誘いに乗ってはいけないと本能でわかりつつも、甘い罪の深遠を覗き込まずにいられない人間の心理

きっとその当時の人々(何度も言うが主に男性)もこの「イヴの誘惑」を見たとき、なんだかわからないけどドキドキしたに違いない。そしてそのドキドキは、本当はいけないことなんじゃないか、後で悪いことになるんじゃないか、という本能的な恐れを感じさせる罪深いドキドキなのだ。そしてその、未だかつてない感情を呼び起こす謎の彫刻に、当時の人々は神の力を感じたのかも知れない。
一文字の説明も無く、人間の深層心理に潜む“原罪”の意識を揺さぶるなんて、すごいぞ、イヴ!

(宮澤)

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2009年10月 5日 (月)

イヴの誘惑に秘められた魅力(オータン)その1

フランス、オータン、イヴ(アップ)、ロラン美術館蔵 「うわー、なにこれ!超怖いね!なんかゾクゾクするよ!思わず見ちゃうよね~!」
私の添乗写真を見ていた夫が思わず声を上げた写真がこちら。

オータンのロラン美術館に保管されている「イヴの誘惑」。

いつもはそんなに外国の写真に興味を示さない(つまりパラパラ見て終わり、感想は殆ど無し)夫が珍しく手を止めた写真。
禁断の果実を手に、アダムをそそのかすイヴの囁きが聞こえてきそうな見事な彫刻。

確かにインパクトが強い作品で、実際に目にしたときに私自信も驚いたのは覚えているけれど、「何これ!」というほどの勢いではなかったような。
「ああ、やっぱりすごい作品だなぁ」としみじみ見入ったという程度だろうか?

何故夫はこの写真にだけこんなにも強く反応したのだろう??
普段は教会や彫刻に全くもって関心のかけらもないというのに(当然ロマネスクも知らない)。

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2009年10月 2日 (金)

ロマネスクとは

スペイン、ボイの谷、タウール この、「ろまねすく通信」の、「ろまねすく」は、ヨーロッパの中世美術史をゴシックとともに賑わした建築・美術のロマネスク様式からとっています。

ローマ風というのが言葉の意味ですが、まあるいアーチ、どっしりとした壁、原色の壁画、浮き彫りのような彫刻が特徴で、北スペイン~南西フランスの教会建築を中心に広く取り入れられた建築・美術様式です。

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2009年10月 1日 (木)

ブログ開設のご挨拶

Santiago_cathedral_2 皆様、はじめまして。

このほど、新しくブログを立ち上げることとなりました。

このブログでは、名前の通り、ロマネスク芸術の楽しみ方はもちろん、可愛らしい村や美味しいお料理、ワインのお話もしていきたいと思います。

お話の中心は、北スペイン、南西フランスになりますが、ロマネスクに関連した話題ならば、イタリアやイギリス、ひいては日本のことも(?)紹介していきます。

旅行会社社員が見た・感じた生の情報です。

どうぞ、お楽しみ下さい!(担当一同)

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