モワサックのサンピエール修道院付属教会、その2(フランス)
モワサックのサン・ピエール修道院付属教会の入り口の魅力は、この壮麗なタンパンのみにとどまりません。
タンパンを取り囲むポーチには、聖母マリアへの受胎告知(これはポーチ外側)、三賢者の訪問やエジプト逃避、さらには吝嗇や淫乱のシンボルが、リアルというよりはおどろおどろしく描かれています。
そして、教会の南に面している扉口を明るい光の中で見上げた訪問者を、光と闇の狭間で迎えるのが、「憂いのエレミア」と呼ばれる預言者エレミアの彫刻です。
等身大よりはすこし小さいのですが、入り口を外側から見るとライオン6頭が重なる柱に、預言者エレミアと聖パウロの痩身が刻まれているのです。
独特の身をくねらせたような立ち方が特徴的です。
彼をして「憂いの」と言わしめているのは、その表情。
こんな一瞬、を誰をモデルに描いたのでしょうか。
遠くを見つめるエレミアの目には何が映っているのでしょう。
迫害され続ける自分の人生よりも、堕落によって荒廃してゆくユダヤの人々の運命を憂いているような表情に見えてなりません。
12世紀、多くの石工たちは神の御業が自分の手を通して石に形を与えるのだと考えたそうで、このころの職人たちは作品に自分の名前を刻んだりはしていません。
今となっては名を知ることが出来ない彫刻家の美しい作品。見逃せません。
(山岸)
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