聖週間より:キリストの捕縛(フランス)
今年2011年の復活祭は4月24日(カトリックの暦、と今年はギリシャ正教の暦においても)。
ということで、昨年に続き今年も聖週間をモチーフとした絵や彫刻をご紹介いたします。
とはいえ、大筋は昨年お話していますので、前回紹介できなかったパートをご紹介いたします。
まずは、「キリストの捕縛」もしくは「ユダの接吻」のシーン。
点数が多いので今日明日に別けましてご紹介します。
最後の晩餐も終わり、ゲッセマネの園で苦悩したキリストですが、ついに裏切り者のユダを先頭にローマ兵たちが押し寄せます。
画家は、「私が先生と挨拶(キス)をするのが、イエス・キリスト。」というキリストの顔を知るユダの合図と、キリストを捕らえる兵士や弟子達の群像を、場面に切り取っています。
しかし場所や作家によって、その表現は様々、では見比べてみましょう。
まずは、フランスのノアン・ヴィック村、サン・マルティン教会の「キリストの捕縛」。
棟方志功を想起させる、力強いタッチで描かれています。
キリストや聖人は大きく、異教徒や罪びとは小さく(多くの場合横顔で)描かれているのがノアン・ヴィックのフレスコ画の特徴です。
続いて、トゥールーズのアウグスティヌス会美術館に収蔵・展示されている柱頭彫刻から。
ちょっと磨耗してしまい分かりづらいところもありますが、ご容赦を。
画面中央、群像の中で一番頭が高く出ているのがキリスト。
左側から抱きついている横顔の人物がユダです。
キリストの手は既に画面右で兵士達に絡み採られ、このあたりの彫刻でよく見かける身のよじりをキリストも見せています。
この彫刻、少し離れて採ると、逆台形のキャンバスに、手前に群像を置き迫力を出しながら、上方の空間に多数の槍を描き、空間の奥行きと、目に見える以上の兵士達の数を表現しているのがわかります。
この美術館のロマネスクコーナーには、実に多くの柱頭があり、ひとつひとつを見て回るのは大変ですが、こんな逸品もあるのです。
続いてはトゥールの北東に位置するロワール川(あの大きい川と音は同じですが別の川)のほとりにある小さなラヴァルダン村にある、サン・ジュネ教会からです。
サン・ジュネ教会は度々増改築を重ねているのでプレロマネスクから近代までの装飾が入り混じっているのですが、このフレスコ画は14世紀に描かれたものだといわれています。
3祭室の主祭室と南の祭室を隔てる壁の、主祭室側に描かれています。
キリストの受難は教会の北壁(上のノアン・ヴィックの例がそう)に配置されることが多いのですが、ここでは祭室の南側に位置しています。
そのため、通常西から東へ、左から右へ進む時系列が反転し、右から左へとキリストの捕縛、鞭打ち、磔刑、十字架降下の順に話が展開しています。
しかし抱きつくユダはキリストの右手側から現れます。
狭いスペースにたくさんの兵士がひしめき、緊迫感を演出しています。
明日は引き続き、イタリア、スイスからご紹介します。
(山岸)
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