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2011年4月26日 (火)

聖週間より:十字架降架

聖週間の物語は、木曜日の最後の晩餐、金曜日の磔刑、日曜日の復活が大きなハイライトといえますが、磔刑に替えて教会などで描かれるモチーフがあります。
それは、十字架にかけられたキリストを、刑の後、十字架から降ろす『十字架降架(またはキリスト降架)』のシーンです。
「フランダースの犬」で主人公が憧れる、ルーベンスの傑作も、この十字架降架を描いたものでした。
ノアン・ヴィック「サン・マルティン教会」の十字架降架
さて、十字架降架ですが、もちろん主役は人の子として死んでしまったキリスト。
他に登場人物は、イエスの遺体の引き取りを許されたアリマタヤのヨセフ(養父ヨセフとは別人)とニコデモ、そして聖母マリアと聖ヨハネの4人です。
写真はフランス、ノアン・ヴィックのサン・マルティン教会ですが、キリストを肩に支えているのがヨセフ、左手の釘を抜いているのがニコデモ、左手の下で頬に手を当てて悲しみを表現しているのが聖ヨハネです。
この絵は入り口寄りに描かれていた聖母は剥落してしまってよく分かりませんが、釘を外されたキリストの右手を自分の頬にあて、その死を悼んでいます。
十字架の上に浮かんでいるのは、顔を覆う月と太陽です。
キリストが絶命した瞬間、昼間の空が闇に包まれ(日蝕)たということから、月と太陽が顔を覆い世が闇に閉ざされた様を表現しているのです。

フランス、オロロン・サント・マリー「サントマリー教会」の十字架降架

さらに、十字架の周囲の人々にマグダラのマリア等の聖女達が加わる場合もあります。
左はフランス、ピレネーの懐にありますオロロン・サント・マリーのサント・マリー教会のタンパン。
十字の上部に太陽と月の和があり、右から悲しむ聖ヨハネ、釘を抜くニコデモ、キリストと彼を支えるヨセフ
(足元にご注目!にょきにょき足場が生えてきています!)
左手には聖母たち。
通例では、キリストの腕をベールに受け取るのは聖母マリアですが、髪を覆った女性たちのうち、後光が差しているのは奥の女性だけですので、こちらがマリアの方でしょう。
キリストの足跡にはキリストを抽象的に現すクリスムが掘り込まれています。
オロロン・サント・マリーのタンパンは、この磔刑の他、黙示録の24人の長老達や現地の風俗を現すような人々の姿も掘り込まれ、聖俗入り混じっていて見飽きません。

イタリア「チロル城」の十字架降架
最後はイタリアから。
イタリア北部のアルト・アディジェまたは南チロルにあります、チロル城の礼拝堂タンパンです。
屋内礼拝堂なので、タンパンが風雨にさらされずとても綺麗に残っています。
頭と手が大きくコミカルに見えますが(ニコデモとヨセフの足から吹いている風のようなものは何でしょう…)じっとその表情を見ていますと悲しみが溢れているようにも見えるから不思議です。
このタンパンは色々な図像が入り乱れて掘り込まれています。
タンパンの半円形の石の下側にも彫刻があることもご覧いただけますでしょうか?

いろいろな十字架降架をご紹介しましたが、ロマネスク教会だけでなく、色々な時代に色々な方法で表現されている場面ですので、ぜひあちこち見比べてみて下さい。
(山岸)

>フランスの旅はこちら、イタリアの旅はこちら

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