聖週間より:キリストの捕縛(イタリア、スイス)
昨日に引き続き、聖週間のストーリーからキリストの捕縛のシーンです。
まずは、南イタリア、ナポリ近郊のサンタンジェロ・インフォルミス教会の内陣フレスコ画です。
11世紀後半の作品で、ビザンツの修道士の画法が用いられているといわれていますが、背景の青や人物の躍動感溢れる動きにご注目を。
登場人物の肌の色も、赤・黒・青といった顔色も混じり、東方やアフリカとの交易・交流があった南イタリアならではの発想に感じられます。
このユダはキリストの左手側からやってきています。
一方、こちらはスイスの山間にある、ツィリスのサン・マルティン教会の天井画です。
キリストの生涯の話では、ここは外せませんね。
左側のパネルで、後光に十字が入っているのがキリスト、その右側がユダ(ユダ思いっきりキリストの足を踏んづけています)、そして後方にキリストの腕を捕らえる兵士、隣のパネルにも兵士達が控え、様子を伺っています。
もちろん、ユダや兵士達には後光は差しません。
さて、ここで気になるのが、主役のキリストの表情とこのポーズ。
ユダには目を合わせず、なにやら隣のパネルを指差しています。
(ちなみに、昨日今日とご紹介したどの作品においても、キリストの視線はユダには向かっていません。)
ロマネスク美術において、誰か人を指差すのは、罪を糾弾する仕草と解釈する場合が多く、それは中世の演劇における「型」のようなものなのですが、つまり、自分を裏切ったユダではなく、その隣にいる誰かが非難されているのです。
さあ、それは誰でしょう?
次回、キリストに非難されたあの人をご紹介します。
(山岸)
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