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2011年4月21日 (木)

聖週間より:捕縛…その時彼は(フランス、イタリア、スイス)

スイス、ツィリスのサンマルティン教会

前回ご案内した、キリストの視線を受ける人物…それは後光つきなのに人に刃物を突きつけているこの人です。

そう、捕縛される瞬間に、キリストがユダでも自分を捕らえようとする人々でもなく気にかけていたのは、十二使徒筆頭の聖ペテロです。
キリストを捕らえに多くの人々(大祭司率いる一師団とも群集とも)が詰めかけ、騒然とする中、ペテロは兵士の一人につかみかかりその方耳を切り落としてしまいます。
それを見たキリスト、「剣によって戦うものは、剣によって滅びる・・・」と言ってペテロの行為をたしなめます。

ツィリスのサン・マルティン教会の天井画で、キリストの捕縛のひとつ前のパネルが上の写真です。天井画の各パネルは幾重もの枠線で囲われているのですが、この2点はとてもよく似た線が使われています。
キリストの指差す先には人を傷つけるばかりの剣があるのです。

フランス、ノアン・ヴィックのサンマルティン教会

続いて、フランス、ノアン・ヴィックのサン・マルティン教会の方です。

刃物を振り上げる聖ペテロ。
左手は既に兵士の耳をわしづかみにしています。
兵士を見下ろすペテロの目にためらいはないように見えます。

一方一際小さく書かれた兵士は、無表情にペテロを見上げています。
手に力もなく、もうすっかり観念してしまったのか?という顔です。

人物の重要度によって人の大きさを描き別けているので、なんだか子供が叱られているようにも見えてしまいます。

フランス、ノアン・ヴィックのサンマルティン教会

この教会のフレスコ画は、衣服の襞やダイナミックの人物の動きなど、繊細ながらとても力強いのが印象的です。

ちなみに、先日のキリストと並べるとこう。
身を反らせたキリスト&ユダとペテロとが対称になっているように見えます。
ユダ越しにキリストの視線はしっかりとペテロに注がれています。

イタリア、サンタンジェロ・インフォルミス教会

最後に、イタリアのサンタンジェロ・イン・フォルミス教会から。
このペテロさんは上の2点と違いかなり怒り心頭なご様子です。

キリストの足元で顔の赤い兵士を押さえ込み、刃物は今まさに耳を切り落とそうとあてがわれています。
耳を切られてはたまらないと、兵士も必死です。
顔が赤いのは、もしかしたら必死のあまり顔に血が上っているのかも?
イタリア、サンタンジェロ・インフォルミス教会なんせ、ペテロの腕は兵士の首をぐるっと抱え込み、彼の左耳にナイフを突きつけているのだから。
暴れる兵士はペテロに足で押さえつけられています。
ちょっとどこがなんだか分かりにくい状態なので、補助線を引いてみました。
緑がペテロ、オレンジが兵士です。
もみ合っている様子がお分かりになりますでしょうか?

ちなみに、今回ご紹介した絵は右・左・左でバラバラでしたが、ヨハネの福音書では切り落とされた兵士の耳は具体的に右耳と書かれています。
左耳を選んだ絵はしかし、こちらの方が構図としてしっくりくるなという印象を与えてくれます。

(山岸)

>フランス・ロマネスクの旅はこちら、イタリア・スイスの旅はこちら

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