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2011年7月 5日 (火)

旅のお共に:五木寛之『スペインの墓標』

昨今のニュースのおかげで「九州男児」の評判がずいぶん下がってしまった気がします。
福岡生まれの“九州女子”としては、ここは九州男児のお株を上げておかなくては…ということで、箒木蓬生に続き(『白い夏の墓標』『薔薇窓』を紹介しました)、本日は郷里の作家五木寛之氏の作品からひとつご紹介したいと思います。

先日文庫本が刊行されました、海外とリンクする短篇集『スペインの墓標』から、表題作「スペインの墓標」です。

物語はフランコ独裁政権下のスペインと、高度経済成長期の日本とを行き来しつつ進んでいきます。
出世街道まっしぐらの仕事も美しい妻も家庭も捨てて男はその時代のスペインに何を見出したのか?
追う主人公と突然別れを告げられたその男の妻とが、謎の答えを追ってマドリッドを走ります。

今、スペインを旅するなかでは「歴史」として語られるフランコ政権時代。
例えば、北スペインのアランの谷からピレネーの山を貫き南麓の村とを結ぶトンネルは。最近新しいものが開通しましたが、隣にぽっかりと口を開けている旧道は、フランコ時代に“囚人たち”を使って掘り進めたものだといいます。
過去の事実として、淡々とガイドやドライバーが口にするこれらの話題は、明るく陽気で気さくなスペイン人の顔にふっと陰りをもたらす気がします。
その闇も全て内包して、複雑でパッチワークのように魅せるスペインという国は、さらに奥深い色香を漂わせているのではないかと感じるのはいささか無責任でしょうか。

小説の向こうから聞こえてくるフラメンコの旋律に、ふとそんなことを考えたりしてしまいます。
(山岸)

>スペインへの旅はこちら

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