私の好きな町:ラ・シャリテ・シュル・ロワール(フランス)
今日紹介しますラ・シャリテ・シュル・ロワールは直訳すると“ロワール河畔の愛”。素敵な名前ですね。
中世に巡礼者たちによって名づけられたこの町は、フランス中部ベリー地方とブルゴーニュ地方の境界にあり、その名の通りロワール川の東岸に位置しています。
町の中核をなしているのはノートルダム教会。
フランスを旅していると、黒い円錐形の屋根をした鐘楼を良く見かけ、あれはクリュニュー系だと教えられますが、ここの鐘楼にももれなくその円錐形の屋根が。
それもそのはず。
全盛期12世紀の頃、ヴェズレーからサンティアゴ・デ・コンポステラへの路上にあったこの教会は、総本山クリュニューに次ぎ、ヴェネディクト会だけでなく、キリスト教世界において当時2番目に巨大な教会でありました。
教会に近づくと鐘楼と美しいアーチが向かえてくれ、前庭のような空間に出ます。
しかしここはかつての身廊部分。16世紀の火災や宗教戦争などを経た今はクリュニュー同様に、この教会も半分朽ちた状態で取り残されています。
2本あった鐘楼は北側のものだけを残し、元教会堂の一部は駐車場や民家になってしまっています。
しかしもともとが巨大なだけあって、一部朽ちても教会の祭壇辺りは当時の様子をとどめています。
南側翼廊には保存のためにファサードから移動されたキリストの生涯を描く小さなタンパンが飾られています。
教会の後陣から一度建物を出て、裏手の丘を登っていくと、そこはかつての僧房など修道院施設の跡地。
灰色の石組みの間には所々煙突が見え、クリュニューの栄華の残照の儚さを語っています。
もう一度教会に戻ってみて、北側の鐘楼を見上げます。
ここにも小さな飾りがあり、聖母への受胎告知・ご訪問・出産と彼女の人生のハイライトが刻まれ、上部には天使に支えられて昇天する様子が描かれています。
このあたり、ロワール河畔はブルゴーニュとベリー地方の様式がミックスしていて、その相互に及ぼした影響を見るのも楽しみの一つです。
構図はどこかブルゴーニュ的なのに絵柄はベリー的であったり。
しかし私は何よりも、羊やロバなどの描き方に、今も牧歌的なこの地方の素朴で長閑な人々の感性に心惹かれてしまうのです。
(山岸)
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