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2011年8月30日 (火)

床モザイクにご注目!(イタリア).

トラの敷物モザイク-チュニス、バルドー博物館蔵小さな石やガラス片を並べて描くモザイクの歴史は古く、ガラスを発明したエジプトや、自然石で美しくモザイクで遠近感のある絵を描いた古代ギリシャ、ローマとその技法は花開き、キリスト教が浸透し、モザイクが教会を飾るようになると、それまで床を彩っていたものが、壁にかけられ、天井を彩るようになりました。
そう、モザイクはそもそも床に絨毯のように敷かれていたものです。
そのため、痛みが激しく、現存しているものも損傷がかなりあります。
例えば、写真はチュニジアの首都チュニスにある、モザイクコレクションでも有名なバルドー美術館(現在修復のため一部のみ公開)にあるモザイクですが、
トラの敷物、、モザイク版。暑い夏もこれならゴージャスな気分を味わえそうな一枚ですが、残念なことに手足の大部分が剥落してしまっています。
よく踏んづけられる所だったのでしょうか。。

さて、ローマの後、モザイク文化が大きく花開いたのが東ローマ、ビザンツ世界においてでした。

更に、ビザンツの美術・技術を踏襲してロマネスクが生まれます。
ローマ風なのはアーチだけではないのです。

さて、モザイクはもともと天然石を使用していましたが、鮮やかな色には奇石を使用することもあり、そうするとかなり高額なものになります。
次第に色つきガラスを造る技術が発達してきますと、自在に色をつけ、時には金箔をガラスで挟んで、永遠に色褪せない輝きを持ったガラス片でモザイクを描くこともできました。
それには相応の財力が必要となるため、イスタンブールやビザンツの影響下にあった各地に現存する黄金のモザイクは、いずれも法皇や皇帝、それに次ぐような力を持った人々が発注したものが多いです。

サン・デメトリオ・コローネの「聖アドリアーノ聖堂」一般の教会では、天然石を使用したモザイクが多く、特にロマネスクの頃は、職人が小さな石で描き出すモザイクが床に敷かれていました。
後代、床は板張りや大理石張りになることも多く、修復工事の際に、したからロマネスクのモザイク床が発見されることもあります。
現在こういった床モザイクを公開している所では、更なる損傷からモザイクを守るため、作で覆ったり(写真は、カラブリア州、コセンツァ近郊にあるサン・デメトリオ・コローネの「聖アドリアーノ聖堂」のもの)、ガラスを被せて特別の通路から見学する所が多いです。
写真を撮るのがとにかく大変。。
教会などによっては、絨毯を敷いてしまい完全に「封印」されたモザイクもあり、実に見学者としては残念ですが、保存と、教会の使用の両立のためには致し方ないのかもしれません。。
オートラント大聖堂
一方、柵などを設けず、あるがまま床のままにモザイクを置いている教会もあります。
南イタリアのターラントやオートラント、トラーニなどの大聖堂は堂々と床にモザイクがあります。
部分部分、参列者の椅子の下敷きになっていたりして、全体を見るのが大変だったり、写真のようにモザイクの上をずんずん人が歩くので、今後の保存が心配になったりもします。
(写真は、オートラント大聖堂。祭壇部分の「原罪」。踏んづけられているのがアダムさん)

特に現役の教会ではモザイク鑑賞は容易ではないのですが、小さな石で描かれた図案は、古代ギリシャのような写実性を失い、ロマネスク特有の素朴でユーモラスでコミカルな絵柄になっている所が個人的にはとても気に入っています。
他の町の教会にも、モザイクが残っている所もありますので、幾何学的なものも含め、ぜひ床を見るのもどうぞお忘れなく。

(山岸)
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