教会と猿(フランス)
しばらく更新が滞ってしまい申し訳ありません。
盆の時期はウガンダの添乗に行っておりました。
ウガンダの旅の第一の目的は、世界で700頭前後しかいない野生のマウンテンゴリラに会いに行くこと。
(マウンテンゴリラを飼育している動物園はないはずなので、実質、彼らに会うといったら野生のものしかいないのですが)
他にも、チンパンジーやヒヒやサバンナモンキーなど、哺乳類の中でもたくさんのかわいい猿と出会う旅でした。
さて、スペインやフランスの旅で、猿を探そうと思うとジブラルタル海峡の野猿が有名ですが、教会内でも探してみると猿をモチーフにした彫刻類があったりします。
しかし、人間の顔を醜悪に描いただけのものもあり、判別が難しく、猿のようなもの、といった方が適切かもしれません。
探してみるといくつかありましたのでご紹介いたしましょう。
写真奥は「リュートを弾く猿」ですが、手前の「竪琴を弾くロバ」とセットで彫られていることで、猿であることが分かります。
うわべだけ人の真似をしている滑稽さや、あるべき所になかったがために生来の実力を発揮できない才能の不運などを風刺していると解釈される図像です。
(フランス、サン・パリーズ・レ・シャテル「サン・パトリック教会」)
続いては、猿か、修道士の姿をまねた猿か、猿のような顔つきの修道士たちの彫刻です。
フランス、ピレネーの山中にある「カニグー修道院」回廊の彫刻です。
額にしわがいっぱい寄っていて耳が大きいとみんな猿に見えてしまって困ります。
周りの生き物も見れば見るほど猿のよう…
次の一枚は、「サン・サヴァン・シュル・ガルダンプ修道院」の天井フレスコですが、ノアの箱舟の船首までが猿に見えてきてしまいました。
本当は、猿がいるなら箱舟のなかなのでしょうけれども…
ちょっと絵が荒くて全ての生き物のつがいを代表して何が描かれているのかはっきりしませんね。
恐らく、牛や馬などの家畜、犬猫…あるいはライオンか何かだと思われるのですが、2部屋目の生き物の背中の盛り上がりが、森の中で悠然と構えていたシルバーバック(成熟した大人の雄ゴリラ)の姿と重なって見えます。
3階に乗っているのはノアの家族でしょうか。
最後は、これはもう猿ではないことは確かなのですが、ポワティエの「ノートルダム・ラ・グランド教会」のファサードのパルメット。
半魚の生き物の顔が小悪魔なのか猿なのか、とってもユーモラスで大好きなモチーフのひとつです。
尾っぽの先にも同じようなおかしい顔がついています。
広いファサードのどこかにこのにやけ顔がいますので、ポワティエにいらっしゃる際にはどうぞお見逃しなく。
図像学的に、猿は、狡猾さや色欲など罪の象徴として描かれることが多く、他の動物モチーフ同様に、教会を訪れる人を戒めるためか、「魔をもって魔を制す」の理論でファサードや持ち送りに描かれることが多かったようです。
実際の猿の性格はさておき、その容姿(伝聞を含め)から想起されるイメージなのでしょうが…ゴリラや、猿達がきいたらにやりとするのかムッとするのか…
そんなことを好き勝手に考える自由も、ロマネスク芸術を見る楽しみだと思っています。
(山岸)
>フランスへの旅はこちら
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