ノアの箱舟(シチリア)
ヨーロッパを旅する方に、参考文献を聞かれると、
土地の案内書に加え、ぜひご一読いただきたいと案内するのがギリシャ神話と聖書に関する本です。
押しなべて、現在ヨーロッパと呼ばれる地域の芸術・美術を見るにあたって、
その主題として多々登場するギリシャ神話、聖書は押さえておいて損はない
いえ、より深く楽しむための必須項目でもあるのです。
とはいえ、日ごろから慣れ親しむことが少ないのも事実で、
ツアー中はお話のあらすじを補いながらの絵画や彫刻の案内が基本です。
そんな中、主題を言っただけでおそらく多くの日本の方が、ああ、あれか、と思い浮かべやすいのではないかと思うのが
聖書では、新約では「最後の晩餐」、旧約では「アダムとイブ」そして「ノアの箱舟」です。
地上にはびこった悪い人間を一掃するために、大洪水を起こし洗い流そうと決めた神様
そんな中、ただ義人ノアとその一族は正しい行いを続けていたために助けられます。
自分たちと、地上の動植物が洪水をやり過ごせるように
ノアは神様に巨大な箱舟の建設を命じられます。
箱舟には全ての動物がひとつがいずつ、植物の種、ノアの一族が乗り込み
地上を洗浄するための大雨と洪水の波間を漂い
やがて水が引いた大地にたどり着き、乗客たちは今の世界の動植物の始祖となるのです。
聖書のお話を描いた教会の絵や彫刻には、画面の大きさやコマ数によって、上記の中からいろんなシーンが選ばれます。
人や動物を満載した船が荒波に浮かんでいるところや大工仕事のところ、
鳩がオリーブの枝を咥えて船に戻ってきたところなど…
描き手や発注者によって異なる表現を見比べるのも、内容がわかっていると楽しくなってきます。
今日はイタリアのシチリア島の教会に残る中世美術から
5点ピックアップしてきました。上から順に
■箱舟の建設の乗船(モンレアーレの大聖堂)
■ノアの招命(箱舟作りを命じられる)と箱舟の建設(チェファルーの旧ヴェネディクト会修道院回廊)
■漂流と下船(同上)
■下船と契約の虹(モンレアーレ大聖堂)
契約の虹は、“浄化”が終わって新しい人類の代表となったノアたちが神様と結んだ契約の印です。
そして地上に戻ったノアは、人類で初めて葡萄を栽培し、ワインを造ったといわれています。
さらに、ワインを飲みすぎて初めて泥酔したのも、ノア。
3人の息子たちのうち、そんな父を嘲笑したハムは呪われます。
右はそのシーン。
虹の元での下船と、葡萄の収穫と、ノアの泥酔。
酔いつぶれてあられもない姿になったノア(寝言が聞こえてきそう)と
そんな父にそっと上着をかける息子と、指差して笑うハムです。
(パレルモ、パラティーナ礼拝堂)
(山岸)
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