不信のトマス(スペイン、フランス、ギリシャ)
教会の彫刻群などで、このモチーフは多くはないのですが、復活劇の一連の流れで取り上げられることもあります。
冒頭で紹介しているのは、北スペインのサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院回廊の不信のトマス。
他の使徒が居並ぶ中でキリストのわき腹をぶすり。
上はそのアップ。角度によって色々な感情を読み取れる顔です。
続いてはフランス中部のサン・ブノワ・シュル・ロワールの修道院教会入り口ポーチのトマスさん。
ここは顔や手がものすごく大きく彫られている彫刻が多いのですが、特にこれはその対比がよく出ています。
後ろの弟子たちのなんだかハラハラしている顔やしぐさがかわいらしい。
ちなみに、キリストに向かってトマスの反対側で巨大な鍵を握っているのは聖ペテロです。
ハラハラしているその他の使徒たちで思い出すのが、
ギリシャのオシオス・ルカス修道院のもの。
トマスだけ顔が剥落していますが、他の10人の個性的な顔立ちはさすがモザイクならではの表現ですね。髪型や顔つきがみな違ってすごい!
キリストの落ち着いた所作や表情にも目が行きます。
アンニュイな感じの服のめくり方もビザンツらしい。
もうひとつフランスより。
トゥールーズのアウグストゥス会修道院美術館収蔵の柱頭彫刻です。
勢いよく指で刺すトマス。
傷口の大きさもすごい。
脇腹だけでは信じられず、キリストの右手の傷口にもぶすり。
さすがのキリストもちょっと腰が引けているように見えます。
お顔もなんだか苦しげ。
各聖人たちは、死後もご利益を求めて生前使用したものや遺体が「聖遺物」として信仰を集めてきました。
トマスさんの場合、遺体の、それも右手の人差し指は特別視をされていました。
なぜなら彼の右人差し指はキリストの体内に触れているから
そして、人の体を持ってこの世に存在した神としてのキリストの存在をも、触れることで証明下とも考えられています。
(山岸)
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