旅のお供に:池上英洋『神のごときミケランジェロ』
35.5歳。
何のことかといいますと、ユーラシア旅行社社員の平均年齢です。
普段自分や周囲の年齢を意識することは少ないのですが、
最近ミケランジェロの作品を見るにつけ、
各作品を生み出した時の彼の年齢を見、
ついつい自分と比べて愕然とさせられることがつづきました。
来月東京に来る「階段の聖母」は14歳の時のもの
サンピエトロ寺院にある「ピエタ像」は25歳で完成し、
そして33~37歳の頃の彼は、
システィーナ礼拝堂の天井画に筆を走らせていました。
ちなみに、同じ礼拝堂にある「最後の審判」のほうは、
60歳代後半のものです。
多作で、多方面で活躍し
しかし手紙や手記には弱気で普通の人間らしさが満ちているひとりの天才。
彼が生み出したもののは今も多くの人を魅了し、
また、スペインのレオン・サンイシドロ教会の王室礼拝堂や
フランスのサン・サヴァン・シュル・ガルダンプの修道院付属礼拝堂など
美しいフレスコの天井画を表す時に『ロマネスクのシスティーナ』とよぶのですから、
30代のミケランジェロが成した事は美の基準の域にまで達したといえるでしょう。
本書は、そんな天才の作品を彼の人生の時系列に沿って紹介し
対立する2家から教皇座についた権力者に翻弄されながら
89歳で没するまで
数え切れないほどの作品を生み出し続けた
ミケランジェロという、神業をもったひとりの人間の人生を紹介しています。
観光ガイドや美術館の見学案内ではなく
ミケランジェロ・ブオナローティという人を知りたいという方にお勧めの一冊です。
(山岸)
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