【共通テーマデー】食べ物で感じる秋の気配~教会で見つけた秋の物詩(フランス、イタリア、イギリス)~
今月のテーマは「食べ物で感じる秋の気配」日本に居て思うのは脂の乗った青魚、新米、栗などですね
ヨーロッパを旅していても、9~10月頃には街角に焼き栗屋がたち
巨大なホクホクの栗は秋の代表選手
ホットミルクやホットチョコレートがほしくなると、夏が終わったのね・・・という気持ちになります。
さて、各地の名物料理のお話しはこのブログでも何度かご紹介していますね
熱々が美味しいカスレなどもいいですが
教会を旅していて「秋!」と思う食べ物といえばハムやソーセージなどの豚肉加工食品です。
もちろん、教会にハムやなんかはおいていません。
修道院も本来はお肉は食べないところですので
しかし中世の農民達の秋大仕事といえば、葡萄の収穫とハム作り
これが教会の「12ヶ月の労働」や「暦」の絵や彫刻に登場し
文字通り、秋の訪れを感じさせてくれます。
かつて土地が貧しく農業が今ほど効率的でなかったころ
どの農家も家畜に冬を越させられるほどの牧草や餌を蓄えることや寒さをしのぐための薪を用意することが出来ませんでした。
そんな家畜たちは、寒さがきびしくなってくると、春に繁殖させる数固体をのぞき
みな保存の利く加工食品、すなわち塩漬けのハムやソーセージになったのです。
教会のカレンダーを見ていると、秋から冬に向けての季節にはそんな血なまぐさいシーンも描かれていたりします(血は出ません、ちょっとユーモラスな表現でむしろ安心します)
いくつかご紹介しましょう。
1枚目の写真は、
イギリスのバーフレストンのセント・ニコラス聖堂のフォント(洗礼盤)より
上段に12星座、下段に対応する農業暦です
5面映っていますがわかりやすい真ん中3面のうち左から
・いて座(11月下旬~12月)と豚にどんぐりやり
・山羊座(12月下旬~1月)と豚の屠殺
・みずがめ座(1月下旬~2月)と老人と若者(あるいは前と後ろに2つの顔を持つヤヌス神)2枚目はイタリアのアレッツォのサンタマリア教会
左から11月のカブの収穫と12月の豚の屠殺
3枚目はフランスのオータン、サン・ラザール教会
上の○から順に
・7月:果物を試食(?)
・8月:大鎌の手入れ (これから麦を刈り取ります!)
・9月:脱穀
・10月:ブドウの収穫(同時に黙示録のシーンも暗示)
・11月:樫の木をゆすって豚にドングリを与える
・12月:薪を負う
・1月:よく肥えた豚を屠殺(11月の倍くらいのサイズになった豚に注目!)
農業暦の彫刻やモザイクなどは各地にあり、
今回いい写真がなくって紹介できなかった
フランスのウェズレーのサン・マドレーヌ教会のものや、
スペインのレオン、サン・イシドロ教会付属の王室礼拝堂の天上フレスコ画、
イタリアのオートラント大聖堂の床モザイクも見事です。
教会の美術というと難しい!と思われる方が多いかもしれませんが
もともと、教会の装飾は文字も読めずラテン語を理解しない農民たちに
教会の教えや生活のコツを教えるためのものですから
絵を見るだけでわかる!というもの、とくに12星座や農業暦は大変わかりやすく
それでいて地方や地域による差が大きく、あちこちで見比べる楽しみがあるモチーフです
芸術や美術が苦手・・教会はつまんない・・と思われる前に、ぜひこんな身近で生活感あふれるモチーフに、中世から変わらない人の暮らしや季節を感じてみませんか?
(山岸)
>ユーラシア旅行社で行くロマネスク美術をめぐる旅の魅力
【共通テーマデー】食べ物で感じる秋の気配
添乗見聞録~ナツメヤシ(チュニジア)
倶楽部ユーラシア~ポルチーニ(イタリア)
ぶらり秘境探検隊~巨大ロブスター(カナダ)
船の旅便り~柿(ヨーロッパ)
パゴタの国からミンガラバー~大豆せんべい(ミャンマー)
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