著:山岸

2017年8月 2日 (水)

蘇るローストチキンの伝説

聖書でニワトリ、といえば聖ペテロがキリストの予言の通りに、キリスト捕縛の後3度キリストを「知らない」と言い、師を裏切ったことを鶏の声で知り深く悔悛する―というお話が多いですね。

イタリア、カステラッツの聖ジャコモ教会
中世に生まれたと思しき鶏関係の伝説もあります。聖地サンティアゴ巡礼路沿いにある、スペインのサント・ドミンゴ・デ・シロスとポルトガルのバルセロスに伝わる、巡礼の異国の若者が、盗人の濡れ衣を着せられたところ、裁判官や領主の食卓のローストチキンが蘇って彼の無実を証明するという話です。
巡礼路沿いに伝播していったようで、イタリア北部、アルプス山麓にあるカステラッツの聖ジャコモ(ヤコブ)教会の壁にもサント・ドミンゴ・デ・カルサーダの伝説が描かれています(上の写真)
さて、先日帰国した北欧ロマネスクでご案内した、スウェーデンのスカーラの大聖堂にある浮き彫りに、「ヘロデの雄鶏」というシーンがあります。
イギリスに同じような名前の民謡があり、また現地ガイドの説明でも、これはヘロデの鶏。
ユダヤの新しい王の到来を信じないヘロデ王が、食卓の鶏の復活をもってその予言を信じたというものです。(剣を持った男たちは嬰児虐殺のシーンをほのめかしていそう。髭の人はヘロデ王?)
スカーラ大聖堂
聖書には登場しない物語なので、外伝的に入ってきたのか、復活する鶏の話のルーツがどこかヨーロッパに古くからあったのか。。。特にこれといった説も見つけられなかったのですが興味深いのでご紹介させていただきました。
他の都市や国で類似の物語があればぜひ教えてください。
(山岸)

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2017年3月 5日 (日)

北欧ロマネスクの旅を発表しました

7月発の北欧(デンマークとスウェーデン)ロマネスクの旅、発表しました。

お陰様でお申し込みも好調です。
シェーリンゲ教会の扉口/ゴットランド島
▲シェーリンゲ教会の扉口/ゴットランド島
オー教会洗礼盤/オーケルビー教会/ボーンホルム島
▲オー教会洗礼盤/オーケルビー教会/ボーンホルム島
英国ロマネスクに行ったことのある方、お好きな方
バイキングの文様と融合した北方ならではの装飾、フォント(洗礼盤)巡りですよ。
 
ゴットランド島(スウェーデン)とボーンホルム島(デンマーク)それぞれに連泊しますので、島好き、北欧再訪の方にもおすすめです。
ヴィスビー/ゴットランド島
▲ヴィスビー/ゴットランド島
海が穏やかで、季節的にも観光しやすい7月限定ツアーです。
詳細・お問い合わせはこちらから
(山岸)

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2016年11月 4日 (金)

ドイツでロマネスク?!(3)ヒルデスハイムの青銅扉

ヒルデスハイムの青銅扉
食べるなと、命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」と厳しい口調で責める創造主。
「こいつが食べろと言ったのです」「私ではありません、悪いのはこいつです」「自分で食べたんじゃない!」
ヒルデスハイムの青銅扉
そんな声まで聞こえてきそうな動き、表情。

1015年のものと言われる、ヒルデスハイムの聖母マリア大聖堂の青銅扉のワンシーンです。
扉は聖堂の西側、ナルテクスと身廊の間にあり、16のシーンでできています。
北側半分は上から下へ、南側半分は下から上へと旧約・新約の物語が描かれています。
アダムの肋骨からエヴァをつくりだし、幸福な楽園の生活に陰りが見えていき、人間は神に背き、生きる苦しみと死を背負い、兄弟殺しが一番地面に近い部分に描かれます。
しかし、南側の半分では新約の物語が始まり、神が人の体を得てこの世にやってきて、受難を経て人々の罪を救済する場面へと続いてゆきます。
降下と上昇がとても効果的に描かれています。

印象的なシーンはいくつかありますが、今日は失楽園を。
浮彫とはいえかなり上半身が飛び出しているので見る方向によって表情もぐっと違って見えます。
責任を転嫁しあう夫婦の様子、悪魔の化身蛇(悪魔はその後のシーンにも登場。いつもこんなコモドドラゴンみたいなスタイル)

二人の目線も興味深いですね。
ヒルデスハイムの青銅扉

こちらは、次の場面、楽園を追われるアダムとイヴ。
悄然と歩き去るアダムの後ろで、憮然とした表情で振り返るエヴァ。

こちらもキッとケルビムを睨む目線にご注目を。

(山岸)

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2016年10月25日 (火)

ドイツでロマネスク?!(2)ハルバーシュタットのタペストリー

来年2017年は、ルターが「95ヶ条の論題」を発表してから500年の記念の年。ドイツ東部に点在するルター縁の地には多くのプロテスタントの方が訪れるとみられています。
500年前、ルターがヴィッテンベルク大学に論題を貼り付けると、このあたりは瞬く間に従来の信仰と新しい信仰のあり方に揺れました。動揺は争いになり、時には権威ある大教会が襲われ、破壊され、オットー朝以降皇帝や大司教たちが蓄えた至宝の多くも失われました。

そんなヴィッテンベルクから西へ100キロほど離れた所に、今日ご紹介するハルバーシュタットはあります。こんな場所にありながら、ハルバーシュタットには1170年頃(諸説あるが概ね12世紀半~後半)に織られた中世のタペストリーが今も何点も残っているのです。

Halberstadt
なかでも素晴らしいのが、現存する長さが9m強の「キリストと12使徒」のタペストリーと、同じく長さ10.4mの「アブラハムの生涯」です。力強い輪郭、動きや構図はもちろん、この鮮やかな色!
いずれも細長い形で残っているのですが、本来は上下にもっと別の場面があったことを想像させます。

タペストリーが織られた時代、このあたりはオットー朝の中心地であり、世界中の宝物が集まったところです。しかし、ルターの論題に始まる宗教戦争や、2度の大戦、社会主義支配等の困難な時代の中で、どうしてこのような素晴らしい状態を保つことができたのでしょうか?
宗教戦争の際、町の人はカトリックとプロテスタントそれぞれに信仰が別れ、今もそれぞれの信仰を守っています。しかし、町の至宝は守らねばと、困難な時代にも、ともに協力し合ってずっと守ってきたのだと言います。

Halberstadt

ドイツに現存する同時代のタペストリーといえば、ケルンの聖ゲレオンの名で有名なタペストリーくらい(しかも19世紀に切り刻まれてヨーロッパに点在している…)ですから、その貴重さと、住民の努力に涙が出そうな出会いでした。
(感動のあまりの手ブレです)

(山岸)

※館内は撮影禁止です。ハルバーシュタットの紹介のため許可を得て撮影・掲載しております

ロマネスクツアーはこちら(2017年初夏~のツアーは12月中旬ごろ発表予定です)

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2016年10月21日 (金)

ドイツでロマネスク?!(1)フライジングの野獣の柱

ずいぶん久しぶりの更新となってしまいましたが、またぼちぼちこっそりとこのブログを通じて色々なロマネスク芸術の魅力やヨーロッパの田舎町のお話しなどしていきたいと思います。

しばらくは、ドイツのロマネスクを中心に。と、言うと、ドイツを訪れ、町の中心に聳え立つ大聖堂をご覧になったことがある方は、あの国のどこにロマネスクが??と驚かれることでしょう。

確かに、フランスやスペインの田舎にひっそりとのこる、ほっこりとさせる小さな教会は少ないのですが、都市の大聖堂のクリプタや、巨大なその建築の土台にどっしり構えるロマネスクがあり、また違った魅力でドイツのロマネスクは私たちを楽しませてくれるのです。

Freisinganimalcolumn
とはいえ、いきなり巨大教会の構造のお話しをするよりは、もう少しなじみやすいものからご案内しましょう。

というわけで、今日はミュンヘンの近くにあるフライジングの聖母マリア&聖コルビアン大聖堂のクリプタの「野獣の柱」を紹介します。

柱そのもののにごちゃごちゃといろんな生き物が彫られているものは、フランスのスイーイヤックやイギリスのキルペックのものがありますが、ドイツにもあり、それがこの「野獣の柱」です。
1200年頃のものと言われていて、高さは約2メートル半。クリプタの天井を支える柱にはぐるりと彫刻が施されています。
柱のほとんどの部分はワニか蛇のようなドラゴンと戦う戦士たち。
しかし既に敗北して、地面から顔を出すドラゴンに丸呑みされている人もいます。(はみ出しているのは脚?尻尾に見えてしまいます)
善と悪の戦いを象徴していると言われ、柱の西側に彫られています。

写真では横顔ですが(右上)、柱の東側上部にはお腹の大きな女性が彫られています。
黙示録の、救世主を身ごもった女性という解釈もあります。

また、柱頭部分の鷲は、地上の戦いとは一線を画した位置にいる救世主キリストの象徴と考えられています。

(山岸)

ロマネスクツアーはこちら(2017年初夏~のツアーは12月中旬ごろ発表予定です)

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2014年4月 1日 (火)

共通テーマ「一度は行ってみたい世界の絶景」ル・ピュイのサン・ミシェル・デ・ギーユ礼拝堂(フランス)

ロマネスクツアー 今月のテーマは絶景!
ロマネスクのツアーでは小さな石の彫刻を見て回る印象があるかも知れませんが、そんなロマネスクの人気教会でありながら、絶景でもある、フランスのル・ピュイにあるサン・ミシェル・デ・ギーユ礼拝堂を紹介します。

フランスの広い国土は、アルプスやピレネーの山並みから長い海岸線まで多様な地形、地質に恵まれています。
滋味豊かな大地と涌き出でる清水は、ヴォルビックやエヴィアンなど日本でもおなじみのミネラルウォーターになります。

そんなヴォルビックの産地クレルモンフェランから南は、火山灰と石灰岩地質が広がっており、長い歳月の風による作用で元噴火口のぽこぽこした丘と、切り立った岩山や崖が複雑な風景を織り成しています。

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2014年3月 4日 (火)

【共通テーマデー】緑が美しい風景~ラヴァルダン~(ユーラシア旅行社で行くフランスツアー)

フランスツアー、フランス旅行 フランスの最も美しい村のひとつ、中部フランスのラヴァルダンを紹介しましょう。
一般的なフランスツアーでは古城めぐりの基点であるトゥール
そしてロマ部員は聖マルタンや、サンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼路の基点と思うトゥールから北西へ、同じく古城で有名なブルノ方向の、ちょうど中間辺りにある小さな村です。

丘の上には百年戦争の逸話が残る城が廃墟となって村を見下ろしています。
私達の目当ては村の中心にあるサン・ジュネ教会。
バスは、小川にかかる橋を渡って村に入ります。
大型バスで渡れるのか心配になるほどこじんまりとした橋ですが
問題ありません。

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2014年1月 7日 (火)

共通テーマデー:旅先で記憶に残った色彩;フランスの光と影(ユーラシア旅行社のフランスツアー)

フランスツアー、フランス旅行今月のテーマは色彩。
中世の教会に今行くと地味~な石の色が露出していますが、
かつては色とりどりに塗られ、暗い堂内でもはっきり見えるように明るい原色の色使いで絵が描かれていました。
1000年かけて色あせて今に至っているのです。

一方で、モザイクやガラスステンドグラスなどは変わらぬ輝きを見せてくれるものもあります。
教会を訪ねて、いつもはっとさせられるのは、そんなステンドグラスからもれる色とりどりの光です。

そのときの光線によって変わるものなので、いつも新鮮な気持ちで見ることが出来ます。

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2013年12月11日 (水)

旅のお供に:ダン・ブラウン『インフェルノ』(ユーラシア旅行社のイタリアツアー)

「ダ・ヴィンチ・コード」でおなじみのダン・ブラウンの新作「インフェルノ」の日本語訳版が出ました!
物語の舞台はイタリアのフェレンツェ。
ラングドン教授シリーズの始まり「天使と悪魔」ではローマを縦横無尽に駆け、謎を追いつつローマの見所や魅力がさりげなく文中で紹介されましたが、
今作でも、フィレンツェの魅力が余すところなく紹介されています。

ダンテの「神曲」や今作で紹介されている絵や場所を解説した関連書籍も多数店頭をにぎわせていますので、
あわせてご覧いただくのもよろしいでしょう。

フィレンツェにいらしたことがある方は情景を思い浮かべながら、
まだいらしたことのない方は、1回目は作品に集中して、2回目は解説書や写真集、地図などを片手に読み返してみると楽しいでしょう。

シリーズの前3作をご覧になっていない方も、この作品からでも楽しめるようになっていますのでご安心を~

(山岸)

ユーラシア旅行社のイタリアツアーはこちら

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2013年12月 3日 (火)

共通テーマデー:大切なお土産〜各地のプレゼピオ(ユーラシア旅行社のロマネスクツアー)

ユーラシア旅行社のイタリアツアーにて共通テーマのお土産、と聞いて思い浮かんだのは各地の缶詰やお菓子など、食べ物ばかりだったのですが。それではちょっとあんまりなのでプレゼピオをご紹介したいと思います。

プレゼピオは、キリスト教の人々が、ちょうど今くらいの時期からクリスマス、年始まで飾るジオラマ人形です。
マリアとヨセフ、羊飼いや牛や馬を中心に凝ったものですと街一つ分のジオラマになります。
12月24日に飼い葉桶に入れられた赤子のイエスを置いたら完成です。

ユーラシア旅行社のメキシコツアーにてプレゼピオの文化はイタリアのアッシジが発祥とも言われています
そこから人形づくりが盛んな地域では特産品となりました。
クリスマスのマーケットにはジオラマ全体はもちろん、小さな人形の一つ一つが売られていたりします。
国や地域によって素材や衣装、ジオラマの背景が違っているのも興味深いです。
特に中南米の方では、馬小屋のシーンにリャマがいたり背景にサボテンがあったり、特に見ていて飽きないものです。

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