著:宮澤

2010年10月14日 (木)

サンティアゴ直送 聖なる土産 その1

「サンティアゴのお土産は何がいいですか?」
時々、いや、わりと頻繁に聞かれるこの質問。
簡単に答えられそうで、ちょっと迷ってしまう。
「サンティアゴにいくなら名産品はこれです!」というわかり易いお土産はなんだろう?
名産品をあげるなら、ガリシアのワインや円錐形のおっぱい(!?)チーズ、あとは修道院のクッキー等がいいだろう。ただ、ワインは重いし、チーズは匂いと賞味期限が心配だし、修道院クッキーは人気が高くて行ったら売り切れなこともある。あとはガシリア風タコの缶詰なんかもあるが、大勢に配る土産としてはいかんせんコストがかかる・・・。

お勧めなのはやっぱり巡礼グッズでしょう。
ホタテの貝殻・・・ある意味超名産品だけど、サンティアゴ巡礼路をあまり知らない人が貰うと、それはただの赤い印のついたホタテ貝の残骸であり、飾り場所にも少々困るかもしれない。
杖とひょうたん・・・日本で使うにはやや長すぎるような気がする。富士山登山のときに似たような杖を見かけるが、いかんせん役立っているのか、勢いで買ってしまったがじつはちょっと邪魔なのか判断に迷うところだ。なにかもっと手軽でしかも喜んでもらえる土産はないものか・・・。

そんなあなたにお勧めのサンティアゴギフト その①は

Magnet_3

『ボタフメイロマグネット』(写真参照)
今年の6月に訪れたサンティアゴで運命の出会いをしたこのマグネット。
四角の枠の中に斜めにデザインされた香炉が「今まさに振られています」という臨場感を醸し出す珠玉の一品。萎みかけた綿菓子のような煙が香炉の蓋の隙間からたなびいているところがまたこだわりを感じさせるではないか。
しかも裏面はマグネットが惜しげもなく前面張りされているところが素晴らしい。これならば冷蔵庫に留めたレシピも扉の開閉の衝撃如きで剥がれ落ちることはないだろう。

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2010年6月16日 (水)

聖フォアの宴~後編

フォアグラ料理一例

聖女フォアの名とフォアグラに関係性があるかどうかは不明(おそらく無い)だが、とにかくサント・フォア教会の周りのフォアグラは美味。
ツアーの食事も、コンク近郊を訪れる日はもちろんフォアグラ料理。
そのコレステロール値に恐れ慄きながらも日本と比べ驚きのお手ごろ価格で食べられるフォアグラ料理にフリータイムの食事でもついつい手を出してしまう・・・。

そしてお土産ももちろんフォアグラ。
聖フォアの会で好まれるのは「ガチョウ」の「エンティエ(ブロック状ではなく丸ごと)」。

フォアグラ要員…

めでたくブツが手に入ると、ロマネスク部に「聖フォアの会」開催の告知が密かに流れる。そして一日の仕事を終えた女達は、厳かな表情でいつもよりそそくさと席を立ち、宴の場(都内某所マンションの1室)へ消えてゆくのである・・・。

聖フォアの名の下に、唇をてらてらと油で輝かすうら若き(?)ロマネスク部員の乙女達。次回開催は・・・(宮澤)

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2010年6月15日 (火)

聖フォアの宴~前編

コンクの聖女フォア

ユーラシア旅行社ロマネスク部で、密かに繰り広げられている宴、それは『聖フォアの会』。

聖フォア(サント・フォア)といえば最後の審判のタンパン彫刻で名高い、コンクの「サント・フォア教会」。山間に佇むこの美しい教会にフォアの遺骨(聖遺物)が持ち込まれたのが9世紀。そしてサンティアゴ巡礼路の一つ「ル・ピュイの道」上にある巡礼教会でもあることから、今でも年間約30万人の人々が訪れる。

この教会のタンパンはとにかく見どころ満載!!・・・が、実はコンクのタンパンについては既にこのブログの「サント・フォア 全6回シリーズ」でY岸さんが特集しているので、詳しくはそちらを。。

今日&明日でこっそりお伝えするのは、タンパンとか柱頭彫刻とか建築とかでは無く、ユーラシア旅行社ロマネスク部で魔女の会合のごとく開催されている『聖フォアの宴』の方です・・・。

続きは明日です。
(宮澤)

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2010年4月 9日 (金)

聖週間番外編:夢の国で復活祭!?

英国キルペックのかわいい持ち送り

先日、東京メトロの車内吊り広告に目が釘付けになった。

「東京ディズ●ーランドにイースターがやってくる(確かこんな感じの見出しだったと思う)」

イースター(復活祭)。
ユーラシア旅行社でヨーロッパ地域を担当している限り、逃れることのできない重要な祭日。
移動祝祭日である復活祭はツアーを企画する上でチェックを怠れない。

しかし、日本ではクリスマスなどのイベントに比べイースターはそれほどなじみが無い。
ミッション系の学校などではいろいろと行事もあるのだろうが、
クリスマスのように町をあげての盛り上がりを見せる感じではない。

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2010年3月17日 (水)

徒然葉人間(その2)

スペイン、ポルトマリンの葉人間

ロマネスクの彫刻は聖書のシーンや聖人等を表すものばかりでなく、唐草や葉のような模様も多い。
しかし、葉人間。
ただの葉っぱであれば気にならないのに、そこに顔がある。
しかもおかしな。

とても気になる。
顔があるからには、単に模様という以上の意味があるのだろう。

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2010年3月16日 (火)

徒然葉人間(その1)

ディジョン、サン・ベニーニュ大聖堂の葉人間

ロマネスク彫刻で、個人的に気になって仕様が無いものがある。

それは「葉人間」。

まずそのネーミングに驚きだ。英語では「グリーンマン(green man)」(そのままだ)。
別にふざけているわけではないのだろうけど、なんだか怪獣のようなその呼び名が気になる。

調べてみたところ「葉人間(グリーンマン)」というのはあくまで便宜上の呼び名であり、特別な名前がある誰か、を表しているわけではないらしい。
その為か、一口に「葉人間」といってもその形は実に様々。
共通なのは「葉+人面」というポイントだけで、顔の形も葉の種類も葉の生え方も千差万別。

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2010年1月27日 (水)

魅惑の持送り その1 ノーズグリムストン/セント・ニコラス聖堂(英国)

前にノースグリムストンの洗礼盤についてここに書きましたが、実は洗礼盤以外にも気になって仕方のないものがこの聖堂にはあります。セント・ニコラス聖堂の外壁、屋根の下にある・・・それは「持送り」。

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屋根の張り出した部分を支えるこの「持送り」に施された彫刻。
実に不思議です。
高いところにあるのでなかなか見え辛く、写真を撮る時もかなりズームにしないといけません。
左の写真、なにやら人の顔のようなものがついている。

カメラのズームを最大にしてみたのがこちら(右)。これは「シーラ・ナ・ギグ」と呼ばれるもので、女性が自らの女陰を両手でがばっと開いているという大胆極まりないポーズ。

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かつてアイルランドの古い聖堂でも良く見られたものだそうですが、そのあまりの大胆さにビクトリア朝時代にだいぶ破壊されてしまったそうです。豊穣のシンボルではないか、もしくは両手で開いているのは実は胸であり、心臓を見せているポーズなのではないかなどなど諸説あるようですが・・・。キリスト教以前の異教の名残を感じる、実にミステリアスな彫刻です。

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2009年12月28日 (月)

ここだからいえるホントにあったフォントの話(その3) ノース・グリムストン/セント・ニコラス聖堂(英国)

英国、ノース・ヨークシャー州ヨークから北東に半時ほどの場所にノースグリムストンという小さな村があります。Orth_grimston_st_nicholas ここには12世紀に造られたノルマン・ロマネスクの教会『セント・ニコラス聖堂』があります。緑の木々が茂る村にひっそりと佇んでいる小さな教会なので、初めて訪れる人はなかなか見つけられないでしょう。私も見つけるのに苦労しました。あまりにも木が茂っていて、前を何度か通り過ぎてもその奥にある教会が全然見えなかったので。North_grimston_st_nicholas_entrance

こちらの教会の『フォント』は、教会の歴史よりも古い、12世紀以前のもの。ノースグリムストンという名前から、もともとはノルマン以前、アングロ・サクソン族の農地もしくは開拓部落であったと思われる場所なので、この『フォント』はアングロ・サクソン様式、もしくは初期ノルマン様式であるといわれています。英国版プレロマネスクみたいなものでしょうか。

教会の入口である南側のポーチから中に入ると、扉を開けてすぐの左手に、突然置かれている大きな『フォント』。置かれている、というか既に床と一体化しているといった感じです。写真を見て頂ければわかると思いますが、床の部分の石と台座がどう見てもくっついており、さらに台座と『洗礼盤』部分もくっついているようなので持ち上げて運ぶことはもはや不可能。赤いカーペットも洗礼盤の台座に合わせてラウンドカット。礼拝用の椅子はもちろんあとから造られたものなので、洗礼盤をよけるような不自然な配置に。半端ない存在感です。Orth_grimston_st_nicholas_font

セント・ニコラス聖堂の『フォント』はその素朴な彫刻が特徴です。全体的に彫が浅く、ちょっと稚拙で技術的に未熟な感じがし、なんともいえないほのぼの感をかもし出しています。彫られているのは洗礼盤には珍しい「最後の晩餐」のシーンですが、弟子のポーズがほぼ全員一緒という大胆なデザイン。レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐とこの最後の晩餐が同じシーンだなんて信じられないくらい、弟子それぞれの個性がなく、一体どれがだれなのか、もはや判別は不可能。髪型も表情も見事に同じ。キリストだけは一際大きく、十字の形の光輪を背負っているのでわかるけれども(上半身の堂々たる大きさに対し、クッションの上にちょこんと置かれたキリストの足があまりにも小さくて可愛いのは必見。)あとは、聖人画などで比較的識別がしやすいペテロですらどれなのか。
でも、実はよーく見てみると、あるんです、微妙な違いが。弟子達の左手は胸に当てられており、右手はテーブルに。その右手をじっくり観察すると・・・持っている食器が違う。ナイフのようなものを持っている人もいれば、フォークの人もいる様子。カップに見えるものも・・・。表情も、ちょっとすまし顔で食べている弟子から思い切りほおばっている人まで、微妙な変化が。そして1人だけ実は髪型が若干違う人物が・・・。これはマタイによる福音書によるとみんなよりちょっとお金持ちだったという、ヨハネなのではないかといわれています。お金持ちだからお洒落しているのでしょうか。

そして最後の晩餐といえば気になるのはあの人です。

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2009年12月14日 (月)

ここだからいえるホントにあったフォントの話(その2) イギリスフォント

英国でロマネスク芸術が開花したのは大陸より少し後の11世紀。
ノルマンコンクェストによってフランスよりもたらされました。
英国のロマネスクはフランス、スペインの影響だけでなくケルト、アングロ・サクソンの流れも汲んでおり、独特の面白さがあります。
ただ、15世紀の宗教改革により多くの教会が破壊され、再建されたのでロマネスクの建築として残っているものは多くはないです。

そんな過酷な歴史を潜り抜け、英国のロマネスクの素晴らしさを現在に伝える存在といえば・・・・そうです。『フォント』です。
小さくて小回りのきく(?)彼らは、ときに農家の家畜の飼い葉桶として身を潜めつつ、現在までしぶとく存在し続けてきたのです。

英国でロマネスクが流行った頃、洗礼といえば全身水に浸かるタイプのものが主流でした。
ですから、英国に残るロマネスクの『洗礼盤』はとにかく巨大なものが多く、その側面に施された彫刻は見ごたえ充分。英国でロマネスクを巡る、というとタンパンや柱頭よりも俄然、『洗礼盤』が注目されるというのも頷けます。英国、ウィンチェスター大聖堂の洗礼盤
「教会の建物は17世紀のものだけど、洗礼盤はずっと古い11世紀のもの」という教会は、英国にはいっぱいあります。
「重いから持ち去るのもなんだし・・・」という理由でリフォーム後も居座り続けた洗礼盤、落雷で崩壊した大聖堂の天井の瓦礫の下から逞しく生還した洗礼盤、小さな村の小さな礼拝堂に人知れず佇む洗礼盤・・・。

英国ロマネスクといえば『洗礼盤』なのです。

そして、『洗礼盤』ロマネスクの最大の醍醐味といえば!!

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2009年12月 7日 (月)

ここだからいえるホントにあったフォントの話(その1)

フォントと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
やっぱりコンピュータの書体データのことを思い浮かべますか?
スイス、ジョルニコ、サン・ニコラ

フォントといえば『洗礼盤』だ!と真っ先に思い浮かんだ方、相当なロマネスク脳の持ち主であると思われます。
ふつうは真っ先には思い浮かびません。

キリスト教でフォント(font)といえば、洗礼盤。
ロマネスク芸術というと、「回廊」とか「柱頭」とか「タンパン」のイメージが強いような気がします。
しかしながら、あるときは壮麗な柱頭彫刻を乗せた柱の陰にひそやかに、あるときは荘厳な聖堂手前のナルテクスの隅に慎ましやかに身を置く『洗礼盤』にも、決して見逃せない傑作が数多く存在します。

かくいう私も密かに『洗礼盤』を愛するひとりでありまして、添乗先で素敵な『洗礼盤』に出会うと必要以上に洗礼盤の説明をしてしまいかねない傾向にあります。

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