旧約聖書

2016年11月 4日 (金)

ドイツでロマネスク?!(3)ヒルデスハイムの青銅扉

ヒルデスハイムの青銅扉
食べるなと、命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」と厳しい口調で責める創造主。
「こいつが食べろと言ったのです」「私ではありません、悪いのはこいつです」「自分で食べたんじゃない!」
ヒルデスハイムの青銅扉
そんな声まで聞こえてきそうな動き、表情。

1015年のものと言われる、ヒルデスハイムの聖母マリア大聖堂の青銅扉のワンシーンです。
扉は聖堂の西側、ナルテクスと身廊の間にあり、16のシーンでできています。
北側半分は上から下へ、南側半分は下から上へと旧約・新約の物語が描かれています。
アダムの肋骨からエヴァをつくりだし、幸福な楽園の生活に陰りが見えていき、人間は神に背き、生きる苦しみと死を背負い、兄弟殺しが一番地面に近い部分に描かれます。
しかし、南側の半分では新約の物語が始まり、神が人の体を得てこの世にやってきて、受難を経て人々の罪を救済する場面へと続いてゆきます。
降下と上昇がとても効果的に描かれています。

印象的なシーンはいくつかありますが、今日は失楽園を。
浮彫とはいえかなり上半身が飛び出しているので見る方向によって表情もぐっと違って見えます。
責任を転嫁しあう夫婦の様子、悪魔の化身蛇(悪魔はその後のシーンにも登場。いつもこんなコモドドラゴンみたいなスタイル)

二人の目線も興味深いですね。
ヒルデスハイムの青銅扉

こちらは、次の場面、楽園を追われるアダムとイヴ。
悄然と歩き去るアダムの後ろで、憮然とした表情で振り返るエヴァ。

こちらもキッとケルビムを睨む目線にご注目を。

(山岸)

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2012年4月25日 (水)

園の中の気になる木(イタリア)

イタリア、トラーニの大聖堂のイヴアダムとイブ、については以前何度かご紹介しましたが、
彼らが楽園を追われる原因となってしまった「善悪を知る実のなる木」について今日はご紹介します。

一般的に、りんごやイチジクの木をモチーフとすることが多いのですが
ロマネスク教会をみていると、判別が難しく、ほんとにりんご?というものも。
何の木だかはわかりませんが、どれものびのびと自由に描かれている気がします。

1枚目は、イタリアのトラーニの大聖堂。
イヴさん、イチジクを皮ごと食している模様。
アダムへ差し出す手は指先にちょんとつまんでパス。

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2012年4月16日 (月)

ノアの箱舟(シチリア)

イタリア、モンレアーレの大聖堂ヨーロッパを旅する方に、参考文献を聞かれると、
土地の案内書に加え、ぜひご一読いただきたいと案内するのがギリシャ神話と聖書に関する本です。
押しなべて、現在ヨーロッパと呼ばれる地域の芸術・美術を見るにあたって、
その主題として多々登場するギリシャ神話、聖書は押さえておいて損はない
いえ、より深く楽しむための必須項目でもあるのです。

とはいえ、日ごろから慣れ親しむことが少ないのも事実で、
ツアー中はお話のあらすじを補いながらの絵画や彫刻の案内が基本です。
そんな中、主題を言っただけでおそらく多くの日本の方が、ああ、あれか、と思い浮かべやすいのではないかと思うのが
聖書では、新約では「最後の晩餐」、旧約では「アダムとイブ」そして「ノアの箱舟」です。

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2011年4月 7日 (木)

天使を見たろば(ソーリュー、オータン)

ロマネスク美術を鑑賞する際に、聖書(黄金伝説や、各種「偽典」含め)の知識は不可欠ですが、彫刻や絵画のテーマにしてはちょっとマイナーなお話?をピックアップしてご紹介していきたいと思います。
ロバに乗るバラム(フランス、オータン、サンラザロ教会の柱頭彫刻)

第一回は、「バラム」のお話。旧約の民数記に登場する人です。
バラムは神の言葉を聞く人として、彼が祝福すれば街が栄え戦に勝利し、彼が呪えば戦に敗れ街が滅びる。。と人々に考えられるほど、力をもつ人とされていました。
あるとき、当時スラエルと敵対していたモアブ人の王バラクが、憎きイスラエルを呪ってもらおうとバラムを呼び出します。

はじめは、イスラエルを祝福する神の声を前に、召集を固辞していたバラムですが、呪いの対価としての褒美が増えた時、欲のため、神の言葉を曲げて王の要求を見たそうと考えました。
ロバに乗るバラム(フランス、ソーリュー、サンタンドージュ教会の柱頭彫刻) 使者とともに家を出てモアブを目指したバラム。
ところがいつも乗っているロバが急におかしな動きをするのです。
急に怯えたように立ち止まり、道を逸れ、石壁と自分の体との間に主の足を挟みずりずりこすった挙句、ついにはへたりこんでしまいました。
怒ったバラムはロバを何度も鞭打ちます。
そこでロバは突然人の言葉を喋り始めるのです。
「僕は悪いことをしていないのにどうして鞭で叩くのですか」と
びっくりしたバラム。
でも怒りは収まりません。

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2009年12月16日 (水)

アダムとイブ:サン・サヴァン・シュル・ガルダンプ(フランス)

アダムとイブ第二弾です。
今回はフレスコ画をご紹介します。

アダムとイブ、と言えば
神が自身の姿に似せて塵から創られたのがアダム、そしてその伴侶としてアダムの肋骨から生み出したのがイブです。
フランス、サン・サヴァン、フレスコ画
このサン・サヴァンの天井画は11~12世紀に描かれたものです。
つい5年程前の修復(洗浄)により、絵をくすませていた埃が取り払われ美しい当時の色合いが見えてきました。

絵のモチーフは旧約聖書で、教会の北東側の端にアダムとイブの創造が描かれています。

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2009年12月11日 (金)

アダムとイブ:フロミスタ、サン・マルティン教会(スペイン)

私事で恐縮ですが、数あるロマネスク美術の中で、幻想動物・地獄絵図とともに好きなモチーフ、ベスト3の座に輝くのは、
アダムとイブ、特に「(イブが蛇に唆され、人類が神に逆らい知恵の実を食べてしまう)原罪」と「(それによりエデンの園を追われる)失楽園」です。
フロミスタのアダムとイブ
多くの教会に飾られている、メジャーなモチーフだけに構図や細かいポーズの微妙な差違を見つけるのが密かな楽しみだったりします。

そんな私の独断と偏見に基づいた「アダムとイブ」コレクションから、いくつか選んで(不定期ですが)ご紹介していきたいと思います。


記念すべき第一回はこちら。北スペイン、ブルゴスの西にある巡礼路沿いの町フロミスタのサン・マルティン教会よりこちらのアダムとイブです。

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