中米ベリーズのお話
みなさん、こんにちは、渚の音と一緒にダンス、高村“こんな夜はカリブと遺跡に恋をして“陽子です。
今日のお話は、中米の小国ベリーズについて。中米にしては珍しく英語が公用語で、最近ではサッカーや野球をする子供も増えては来たものの、まだまだポロが盛ん、とイギリスの影響が色濃く残っています。 ベリーズはメキシコとグアテマラに挟まれたカリブ海沿いにある国で、ユカタン半島の付け根に位置しています。ユカタン半島といえば、マヤのメッカ。マヤ好きな私がベリーズを訪問した一番の目的は遺跡巡りでしたが、実際に訪ねてみて少し印象が変わりました。グアテマラから国境を越えてさらに進み、ベリーズ最大の街ベリーズシティに入ると、それまでの雰囲気と何だか違っていて、街で見かける人の中に圧倒的に黒人の割合が増えるのに気付きます。
カリブ海沿岸地域の黒人というと、その言語、舞踊と音楽が世界無形文化遺産にも登録されているガリフナ人のことが思い出されます。せっかくなので、ガリフナについて簡単にご紹介したいと思います。
時代は17世紀。西アフリカ沿岸諸国出身の黒人奴隷を運んでいたスペイン船が途中で 難破し、何とかホンンジュラスから3,000キロ離れたセントビンセント島に流れ着きました。彼らは先住民のカリブ族に助けられて生き延び、その後混血が進んで現在のガリフナ族の先祖であるガリナグ族が誕生しました。彼らはお互いの文化や風習を徐々に融合させて、独自の文化を持つようになります。
現在に伝わるガリフナのダンスや音楽はアフリカを感じさせ、魂に直接訴えかけてくるようなパワーを強く感じるのはその為でもあります。さて話は戻って、その後18世紀後半に入り、イギリス人がセントビンセント島にさとうきびプランテーションを作ろうと入植しガリフナ族を奴隷化しようとしましたが、彼らは反乱を起こします。その後、カリブ海においてイギリスと敵対していたフランスと組み30年以上に亘る徹底抗戦の末、自治区を勝ち取りました。
アメリカの独立、フランス革命、そしてカリブ海でもハイチが後に黒人初の国家として独立を果たしたような時代でもあり、セントビンセントにおいても独立の気運が高まりますが、肝心のフランスが国内の革命による混乱もあって支援が得られず、結局は降伏することになりました。辛うじて勝利したイギリスは彼らの奴隷化を諦めますが、同じ島内に住むことすら拒み、5,000人を越える全てのガリフナ人を近くの小島に追放します。劣悪な環境と食糧不足の中で、半年間で半数以上が亡くなりました。その後、生き残った2,000人のガリフナ族はさらにホンジュラスの沖にあるロアタン島に強制的に運ばれ、その後当面の食料と農具、釣具などの道具類とともに置き去りにされてしまうのです。取り残されたガリフナ人たちはやがて対岸のホンジュラスを中心にベリーズ、グアテマラ等、カリブ海沿岸の国々に点々と集落を作り、移り住んでいったのです。
こんな悲しいガリフナの過去とは裏腹に、今ベリーズで感じられるのはカリブの国ならではの明るさと、以前からインドや中国など多くの国からの移民を受け入れてきた寛容さです。大型クルーズ船が寄航することもあって、欧米からの観光客が主流ですが、我々日本人が旅していても居心地の良さを感じるのは、そんな気質のせいもあるのではないかと思います。イギリスから独立して30年足らず。何年後かに再訪したらどうなっているのか。まだまだ未知なるパワーを秘めた国であることも大きな魅力です。(高村)
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