【共通テーマデー】旅に誘われた私の一冊
みなさん、こんにちは。途中下車禁止!走り出したら止まれない吉村“特技は現実逃避行”和馬です。「旅に誘われる私の一冊」という共通テーマですが、さて、困りました。元来、一日1冊ペースで本を読んでいる私。忙しい日々が過ぎたあとには、必ずといっていいほど本を読むためだけにブラリと旅行に行ったりもします。しかし、さて、本を読みに旅に出ることは多いけど、旅に出たくなる本…。悩んだ末、ご紹介させて頂くのは『路上(オン・ザ・ロード)』(ジャック・ケルアック著)(河出文庫)です。 若い頃、アメリカに憧れた方なら一度は見たことがあるであろう青春小説です。アメリカでの初版は1957年。今から半世紀前の小説ですが、私がこの小説に出会ったのは人生に悩んでいた学生時代の真っ只中。秘境チームの中でも無類の島好きである私は、学生時代もとにかく時間があれば離島に赴いていましたが、やはりその頃から移動時間にはひたすら本を読み漁る。手当たり次第、古本屋で本を買い込み、一気に読み漁る。そんな中でこの『路上』との出会い。まさに衝撃。今すぐ広大なアメリカを旅したい!!と思ってしまうほど、小説の中に登場する「アメリカ」という国は、自由の象徴でもありました。
「ビート・ジェネレーション」という言葉は、「人生に望みを失い思想・音楽・空想ざんまいにふけったり異様な服装をしたりして気ままにふるまう人たち」を指すとのことですが、その「ビート・ジェネレーション」のバイブルとも言えるのが『路上』です。そして、私のバイブルでもあります。その後、1960年代に入ると、この思想がロック・ミュージシャンなどの音楽や、ヒッピーたちの価値観として次第に広がりを見せていきます。もちろん、80年代に生まれた私が知るアメリカは、既に「ビート・ジェネレーション」の時代は過ぎ去ってしまっていましたが、場所や時代に違いはあるにせよ、それでも私に衝撃を与えるには十分すぎる内容でした。
『路上』から私に伝わったこと。それは一貫して自由の追求でした。登場する人物たちの自由の象徴は『旅』。今でこそ、アメリカ国内には至るところに航空機や鉄道が張り巡らされていますが、この当時は車。個人の車で、ヒッチハイクした車で、ニューヨークやシカゴやサンフランシスコ、ニューオリンズ、そして果てはメキシコシティまでを、様々なメンツで、思いつくままに走り抜ける。ただそれだけの内容の中に、ドラマがあり、夢があり、希望があり、そして自由がある。アメリカの広大な道路を走ったことがある方には分かって頂けると思いますが、アメリカを車で走るということには浪漫があり、その壮大な浪漫がありありと目に浮かんできます。
この小説に多大なる影響を受けたという人物にボブ・ディランがいます。彼自身が「この小説に出会わなければ、今の私はなかっただろう」的な発言も残しています。そんな彼の代表作「Blowin' in the wind」。その歌詞で、『どれほど人は生きねばならぬのか ほんとに自由になれるために。どれほど首をかしげねばならぬのか 何もみてないというために。答えは風に吹かれていて誰にも分からない』(意訳)とあります。いつになっても人間が思ってしまう、でもいつまでたってもわかることがない命題を、突きつけてそして答えはやはり分からない…と歌っている往年の名曲ですが、この曲を聞きながら『路上』を読むと、「答えはきっと外の世界にあるんだよ、さぁ、旅へ出ようぜ!」というメッセージがヒシヒシと私に伝わってきます。
アメリカという広大な国。自由があり、自然があり、歴史があり、文化がある。もちろん、全ては個々のものですが、私にとって『路上』は、全てをつなぐひとつの掛け橋になっています。映像と違い、本の素晴らしさは奥行きがあることだと私は思います。文章を目で追い、頭の中で想像を広げる。その想像に答えはありません。実際に訪れてみると、想像通りの光景かもしれませんし、全く別のものかもしれません。その上で、同じ本を読み返してみるとよりリアルに本の世界に入ることができます。現代では、メディアやインターネット、雑誌で世界中の観光地の映像を見ることができます。ただ、それを見てしまうと想像というリアルさが一気に欠けてしまう気がします。文字を見て、想像して、実物を見る。そうすることでひとつのものが幾通りにも見え、旅を何倍も素晴らしいものにしてくれるのではないでしょうか。
広大なアメリカを旅する時には、是非とも『自分の一冊』を持って旅に出掛けてみて下さい。
【共通テーマデー】6つのブログでお届けする「旅に誘われた私の一冊」
〔添乗見聞録編〕
〔倶楽部ユーラシア編〕
〔ぶらり秘境探検隊編〕
〔ろまねすく通信編〕
〔船の旅便り編〕
〔パゴタの国からミンガラバー編〕
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